マインドファーストは,メンタルヘルスユーザー,家族,市民一般からなるNPO 法人で,臨床心理士・精神保健福祉士・看護師・保健師・医師及びその他の支援者の協力のもとに,メンタルヘルスの推進と心のケアシステムの充実に向けて活動を行なっています。
マインドファーストは,メンタルヘルスユーザー,家族,市民一般からなるNPO 法人で,臨床心理士・精神保健福祉士・看護師・保健師・医師及びその他の支援者の協力のもとに,メンタルヘルスの推進と心のケアシステムの充実に向けて活動を行なっています。
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メンタルヘルスケア
~モノローグからダイアローグへ~
マインドファースト通信編集長 花岡正憲
ボランティア元年とされた1995年の阪神・淡路大震災では,多くのボランティアが現地入りして「心のケア」の必要性が認知されるところとなった。しかし,2011年3月11日の東日本大震災では,心のケアのために現地入りするボランティアが,マスメディアで大きく取り上げられる一方,「心のケアお断り」という貼り紙を出した避難所があった。避難所を訪ね被災者から話を聞こうとする「心のケア」のアウトリーチサービスが,被災者のためではなく,支援者側のニードによるものであることが嫌われ始めたということであろう。
今日,心のケアや心の健康を掲げた精神科病院やクリニックが増える中で,医療現場でも心理職を配置し心理テストや心理的治療が行われることが目立つようになった。こうした中で,ICD-10(国際疾病分類第10版)やDSM-5(米国精神医学会精神障害の診断と統計マニュアル 第5版)などによる操作的診断が,不健康を探し出し過ぎ,過剰診断をもたらすという批判がある。拡大しつつあるグレーゾーンにおける画一的で構造化された心理的治療の有効性も曖昧である。
今日,学校や地域社会においても子どもや生徒を巻き込む事件が発生したとき,心のケアためのカウンセラー派遣は,支援パッケージの定番メニューになっている。心のケアが広がる中で,心のケアをクリシェ(cliché 陳腐な謳い文句)で終わらせるのではなく,そのあり方や内容の評価を議論する時期にきていると言えよう。
英語で「shrink」は「縮む」「萎縮させる」と訳されるが,アメリカ英語ではshrinkは,精神科医や精神分析医,心理カウンセラーを意味するスラングとして使われる。敵の首を切り落として一回り小さくして保存するジャングル
の首狩り族(head shrinker)から来たものらしい。精神科につくと精神症状や悩みごとで張り裂けそうになっていた頭が縮むというだけでなく,治療的にコントロールされことで,人として大切にしていたことまで失ってしまうという揶揄が込められている。
すべてを技術化する専門家の姿勢が問題を形成するという考え方に立ち,諸外国では,会話療法(talking cure)のあり方が模索されてきた。
その一つに,家族療法の分野から出てきた概念であるナラティヴ・アプローチがある。治療者の役割はクライエントとの対話によって新しい物語を創造すること,すなわち,目標は,問題を解決することではなく,会話をとおして新しい意味を発生させるということである。
ナラティヴ・アプローチは,社会構成主義(social constructionism)を理論的骨格としている。現実というのは,言語を媒介にした人々のコミュニケーションの間で構成されるため,人々が経験している現実とは別の「客観的真実」とか「本質」といったものは存在しないという立場である。
ナラティヴ・セラピーと呼ばれることもあるが,新しい理論や技法ではなく,「実際にどうすればよいか」という技法的側面を過度に注目しない一つのスタンスである。ここでは,「無知のアプローチ(not knowing stance)」に基づく対話を大切にする。重要なのは,私たちは経験を「物語」として把握し,「物語」を演じることによって人生を生きている,ということである。
精神病治療分野では,1990年代から世界各国で,薬物低減と入院を回避するためのプロジェクトが進められるようになった。狙いは,特に初回精神病エピソードの早期対応のさいに起こりやすい治療的介入よる二次的な心理社会的障害を回避し,より望ましい方向で精神的危機を解消することにある。2005年10月,日本で開催されたワークショ
ップに招かれた家族療法家のリン・ホフマンは,「石灰化(calcification)した会話」を溶かす会話についてふれ,その成功例の一つとして,1992年からフィンランド西ラップランドにおいて臨床心理学者ヤーコ・セイックラ(Jaakko Seikkula)等が行った精神病発症リスクのある若者に対するオープンダイアローグ・アプローチ(Open Dialogue Approach ODA)を紹介した。
オープンダイアローグとは,「対話式討論法(dialogism)」による会話を通して,患者や関係者が体験している困難や患者の病的な行動に,新たな別の理解やコンテクスト(文脈)を与えるという考え方に基づいたものである。具体的には,患者と家族を含めた治療チームの間で,ある事柄についての様々な角度からの意見が交わされるなかで,一見不健康であったり危険であったりすることが,必ずしもそうではないという意味づけを以下の要領で引き出すことである。
①チームメンバー全員参加による危機をもたらした家族生活や出来事に関する情報を収集する。②面接場面における家族とチームメンバーの関係の構築とオープンな意見交換を大切にする。③メンバー相互間の語りかけと傾聴をとおして,患者と家族が抱える問題や困難を語り合い,関係者の間で新たな理解と意味付けを構築する。④患者の退行した心理ではなく,大人としての側面に働きかける。
家族療法と心理療法のトレーニングを受けたチームメンバーが,患者や家族や関係者が体験している困難や患者の病的な行動について,タイムリーな相互の語りかけと傾聴を大切にするために,特に初期の危機状態における速やかな介入を重視している。(次号に続く)
第260回理事会報告
日 時:2025年5月12日(月)19時00分~21時20分
場 所:高松市本町9-3白井ビル403 オフィス本町
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果
第1号議案 おどりばに関すること:オンラインで参加した岩﨑祥子会員より説明,提案があり,以下の事が承認された。①スタッフ体制はシフト制での運営とする。②新規スタッフ向けの運営の手引き案の説明がなされ,マインドファーストが作成した「相談支援事業(グループミーティング)・居場所作り事業(グループワーク)実施要領」も参考の上,岩﨑会員が,運営の手引きを作成する。
第2号議案 会計に関すること:理事長島津から,預貯金通帳,現金出納帳について説明があり異議なく承認された。
第3号議案 2025年度事業計画に関すること:標記について,以下のことが承認された。①傾聴・相談力セミナー ブロシュール作成に関すること:ブロシュール案について,連絡先・申込先など,必要な情報が不足している点や,デザインの統一性に関する意見,外部デザイナーに依頼する意見等を踏まえ,提出されたブロシュール案はワーキンググループに戻して再度検討する事になった。HP掲載に関しては,ブロシュール完成後とする。②心の健康オープンセミナーに関すること:2025年度も前年度並みで開催。準備等は,昨年同様9月頃から開始する。昨年度の講師に意向確認後,必要であれば,ファミリーカウンセラーに講師を募集する。プロジェクターの購入に関しては,使用頻度等を考慮した上で今年度は購入を見送る事となった。③オープンダイアローグ学習会に関すること:年度内に学習会の立ち上げに向けて,オープンダイアローグに関する最新情報を収集する。④シンポジウム及び記念誌の発刊に関すること:2026年度「認定NPO取得10周年&NPO取得20周年記念イベントプロジェクト」として,今年度中に準備会を立ち上げる。日程について,青木から,2026年10月10日が土曜日である事から,メンタルヘルスデーと連携して行う案が提案された。
第4号議案 共同募金に関すること:令和6年度(令和7年度事業)のテーマ募金も今年度と同様の内容で,申請する事で了承された。
第5号議案 2025年度社員総会に関すること:標記について,以下のことが承認された。①開催日時:6月8(日)13:30~15:00 ②開催場所:四番丁コミュニティセンター和室 ③議案書に関すること:理事メールで送付の議案書案等について,了承された。④発送作業は,5月
21日16時以降に行う。⑤総会当日の役割分担(事務局案):受付・集金(青木),進行(上田又は森本),議長(花房),書記(花岡),議事録署名(島津,当日出席の会員) ⑥役員改選に関すること:自薦及び他薦書を議案書に同梱する。⑦総会後の理事会に関すること:総会終了後役員改選による理事会を開催して理事長を選出する。
第6号議案 旧リトリートたくまの撤収物品の処理に関すること:青木から,オフィス本町に仮置されているリトリートたくまの撤去備品リストが提示され,以下のことが承認された。①大型備品については,青木が有効活用する。②パンフレットスタンド・プリンター・キャビネットは,本町にて使用する。③故障しているトナープリンターは,AIYAシステムにチェックを依頼し,修理不能であれば,廃棄処分する。④三豊市より譲渡のオセロ等のレクリエーション用具やタイムレコーダーは,当面,オフィス本町にて保管する。この作業過程の中で,オフィス本町にて古いチラシやブロシュール等が多数保管されている件については,資料として数部残し,残りは廃棄処分する。
第7号議案 リトリートたくまに関すること:標記について,以下のことが承認された。①スタッフ勤務時間について:当初の予算通り前後時間を含めて3時間で計上する。②スタッフの報償費および旅費の支払いについて:リトリートたくまのスタッフ間で,支払い頻度について取り決める。上田が担当として,請求書・領収書の作成,管理を行う。事務局は,それに基づいて,振込にて支払いを行う。③公的機関等からの問い合わせ対応について:花岡が担当。④三豊市への月次報告書及び年度末報告書(会計報告を含む)について:花岡が担当。⑤開催頻度は月2回であるが,三豊市からのマリンウェーブ休館日等による別日開催の要望に対しては,開催しないことする。⑥チラシによる広報について:マリンウェーブ常設チラシ以外の配布に関しては,必要に応じてマインドファースト側から三豊市にデータを提供し,三豊市側で印刷・配布を依頼する。⑦HP掲載について:旧リトリートたくまのページは削除する。
第8号議案 マインドファースト通信の編集に関すること:編集長が,Web版の素案を近日中に示すことで了承された。
第9号議案 2025年度の体制に関すること:現在,理事長が担っている業務は,以下のとおりである。講師依頼,関係機関との連絡対応,会場費の支払い,日々の現金出納会計業務,事務局の電話対応,ぴあサポートラインのコンサルテーション,世界メンタルヘルスデー(10/10)キャンペーンの準備,香川県自殺対策相談窓口担当者研修会打合せ(障害福祉課 8月),香川県自殺対策連絡協議会(オンライン 8月末),高松市自殺対策推進会議,次年度県自殺対策強化事業の実施予定提出(10月)。理事長より,各相談事業において事業担当理事による業務分担の提案がなされた。理事長が事故あるときの対応については,定期社員総会の役員選出後に,別途議題として取り上げ,協議を行うことで了承された。
第10号議案 その他の事項に関すること:オフィス本町のパソコンについて,ネット接続はされているが,メールの受信に不具合がある。AIYAシステムに,パソコンの点検を依頼することで了承された。
編集後記: 閉店前のデパ地下では,お惣菜コーナーに行列ができます。すでに2割引のシールが貼られた商品も,少し待てばその上から「半額」シールが貼られるからです。調理済のものに次いで,閉店前に値が下がるものは,一部の生鮮食品です。消費者の買い控えでモノの値段が下がるという分かりやすい市場原理ですが,同じ食料品でも「米」は,なかなかそうは行きません。麺類,パスタ,パン,ジャガイモなどで凌いで待っていても米価は下がりません。政府備蓄米が,破格の値段で,配給米のように放出されても,銘柄米価格は,高止まりの状態です。米は,多毛作でない限り,年に一回とれたものを備蓄しておき,順次市場に出していくわけですから,銘柄米は買い付けられた段階で,予定小売価格はほぼ決まっているようなものです。古米,古古米,古古古米が放出されたからと言って,銘柄米の値段が大きく下がることがないのは,中古車市場が活況だと,新車の売れ行きは一時的に落ちるでしょうが,小売価格が大幅に下がることがないのと似ています。主食を米以外の炭水化物で摂るようになれば,需給バランスから一時的に米価は下がるかもしれませんが,作付面積が減っていきますから,長期的には国内産の米価は高くなっていくでしょう。してみれば,このことは,日本人の食文化の変化によって既に起きていると考えた方がよさそうです。米を食べたいのであれば,世界の人口の約半分が米を主食としている現実に立って減反政策を廃止した方が,安くて,そしてもっと美味しい米に出会えるようになるかもしれません。(H.)