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翻訳・頒布
精神病早期診断とマネジメント-家庭医のための手引書-
The Early Diagnosis and Management of Psychosis
-A Booklet for General Practitioners-

往々にして,精神疾患は適切な窓口へのアクセスがおこなわれないままに,発症から2年ないし3年を経過していることがあります。精神的不健康状態の遷延化は,若年者,ことに思春期という大切な時期にある人たちに与えるダメージは少なくなく,この間の成長を停滞させかねません。就職や社会参加への見通しが立たなくなり,薬物乱用,行動障害,経済的困難など,二次的問題の発生によって不健康状態や病状の固定化も起りがちです。

1990年代から,精神病状態をきたした若者に対して,より良い予後と二次的な心理社会的問題の発生の防止などを目的として,早期に予防的介入をおこなうプロジェクトが諸外国で試みられるようになりました。オーストラリア,メルボルンのEPPIC(Early Psychosis Prevention and Intervention Centre初期精神病予防介入センター)は,今日,国際的にもこうした取り組みをリードする立場にあります。

おなじメルボルンには,若者に対して質の高い総合的なメンタルヘルスサービス提供している機関ORYGEN Youth Healthがあり,EPPICの実践的臨床プログラムを支えています。ORYGEN Youth Healthでは,EPPICへの技術提供の一環として,冊子「The Early Diagnosis and Management of Psychosis-A Booklet for General Practitioners-」を作成し,メルボルンの一般医に配布しています。

本書は,精神病状態にある人への治療的介入に関するものですが,単なる医療技術論にとどまらす,精神病患者とされることによるスティグマ(烙印)と精神保健サービスへアクセスすることによって起きる医原性のトラウマ(心的外傷)の予防を重要視しています。原著わずか36ページの小冊子は,その点でも,わが国の精神医療のあり方を根本から問いなおす多くの示唆を含んでいます。

マインドファーストでは,本書の訳出と頒布について,ORYGEN Youth Healthと交渉を進めてきましたが,このたび,日本語訳にはマインドファーストが全面的に責任を負い,頒布に当たり営利を追求しないこと,日本の事情と異なる内容についてはORYGEN Youth Healthは責任を負わないことを条件に,このたび「精神病早期診断とマネジメント-家庭医のための手引書-」として日本語版の発行が認められました。

今日,わが国でも,プライマリケアの担い手として,ホームドクターの役割が再認識されるつつある中,この冊子が,精神病状態をきたした若い人たちが,家族,学業,就労などとの断絶をきたすことなく,プライマリケア段階で健康を取り戻し,健やかな心理社会的成長過程を歩んでいく一助になれば幸いです。

日本語版発行を快諾されたORYGEN Youth Healthのご好意に心から感謝申し上げます。

2005年4月


おかげさまで,本書は2007年3月をもちまして完売いいたしました。今のところ増刷の予定はありません。

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