年頭所感 ~「温故知新」雑感

マインドファースト理事長 島津 昌代

長引くコロナ禍にロシアのウクライナ侵攻,物価の高騰等,不穏な状況が続く中で新年を迎えました。何かにつけキナ臭さを感じるのは私だけではないと思いますが,こういう状況だからこそ,「温故知新」という言葉を噛みしめています。

ところで,私にとって正月といえば箱根駅伝。1920年に始まったこの駅伝,今年もドラマがありました。皆,どれほどの思いを込めてその場に臨んだことでしょう。そこまで一生懸命打ち込めるものと出会い,それを通して仲間と深い繋がりを持ったという経験は本当に素晴らしいものですが,個人的に印象に残ったのは,優勝した駒澤大学の監督が選手の指導法を変えていたということです。まさにコーチングの手本だったのではないでしょうか。選手たちのインタビューから,監督の自分達への信頼と対話が彼らを育て支えてきたことがうかがえました。

かつて指導者は上から引っ張り上げる人でしたが,今は寄り添って見守り,必要に応じて手を貸すといった存在のようです。選手が自ら望み,そのために工夫し努力することは底力になります。信頼されているからこそ,自分たちで考えて目標に向かって努力する。それでも,成果はすぐには得られないかもしれない。そこを耐えて自分の力で頑張った,ということが自分を信じる=「自信」になるのでしょう。

さて,こんな風に打ち込める何かに出会えた人は幸せですが,それが見つからなくて悶々としている人が現実には少なくないと思います。中には,何をやっても長続きしないと思っている人もいます。多分,その人は自分に合い,自分を活かせるものを探究し続けているのかもしれませんね。ただ,本当に自分にピッタリくるものは最初からジャストフィットしているわけではありません。使っているうちに手に馴染んでくるように,やっているうちに馴染んで

くる場合もありますので,その時差の存在は頭の片隅に置いといてください。そして,「好き」なものは大事にしてほしいと思います。なぜなら「好き」はけっこう長続きしますので。

最後になりましたが,本年も何卒よろしくお願いいたします。

技術援助 講師派遣

子どもたちからのSOSへの対応力向上研修

マインドファースト理事 森本雅榮

2022年11月29日(火)13:30~14:30,香川県立三木高等学校3階大会議室において,三木町役場住民健康課主催の「子どもたちからのSOSへの対応力向上研修」が行われました。出席者は三木高等学校の教職員及び中・小学校の希望の教職員合せて50名でした。マインドファーストからは講師として島津と森本が派遣されました。

先ず,森本が悩みのサインに気づきましょうと話を始めました。SOSや悩みのサインは特別のものではなく普通のものであるから見逃すことが多い。注意して生徒をよく観察していると普段と違う行動に気づくことがあります。行動とは,話していること,していることですから普段と違うことを言っているとか普段と違うことをしていることが悩みのサインになります。気付いたら声をかけて聞くことが大切になります,と話しました。

「聞く」ことに関しては先ず広辞苑より例を引き「傾聴」の話をしました。さらに「傾聴」は英語ではactive listeningということからactive listeningの説明をし,聞く側の姿勢として,カール・ロジャースが提唱した3条件,「自己一致」「無条件の肯定的配慮」「共感的理解」を簡単に解説しました。

その後具体的に,黙って聞く,相づちを打つ,うながす,オーム返し,言い換える,の5つのコツを話し,←


→これらが大よそカウンセリングの5つの基本的技法の受容,支持,繰り返し,明確化,質問に当たることを説明しました。カウンセリングでは「傾聴」は黙って聞くことだけのように思われているかもしれないが,情報を得るためには質問は必要なことで,5W1Hの内容になる質問が良いが相手を構えさせてしまうWhyではなくHowがいいでしょうと強調しました。

カウンセリングには第1段階:関係を作る,第2段階:問題の核心を掴む,第3段階:適切な処置をする,がありますが,学校現場では第1・第2段階が重要です。第2段階の核心を掴むためには「聞く」ことは見過ごせないものです。問題の核心を掴んだ後は,出来ることと出来ないことがありますので,1人で抱え込まないで周りの方に相談することが重要です。また聞くことは一足飛びには身に付くものではありませんので家庭での練習を勧めて締めくくりました。

その後島津に代わりました。打合せの時の質問に答える形で,「自尊心を高めるにはどうすれば良いか」に対しては,失敗したことを否定的に捉えず,結果にこだわるのではなく挑戦したことやがんばった途中経過をほめることが人間関係を良くし,自尊心を高めることにつながりますと伝えており,リストカットの生徒への対応としては,気づいた時には見て見ぬふりをせず,体だけでなく心も含めて「痛いよね」と言って手当をしましょうと話しておりました。この時はノートを取っている先生方が多かったように見受けられました。

最後に,先生方の心のケアとしてマインドフルネスの説明と実習を行いましたが,時間がなく充分なシェアリングができなかったことが残念でした。盛りだくさん過ぎたと反省しながら研修会を終えました。


2022年度若者層向けの自殺予防・心の健康づくり事業

香川県立農業経営高等学校

マインドファースト理事 花岡正憲

2022 年12月13 日(火),標記研修事業に,マインドファーストから,花岡を講師として派遣し,県立農業経営高校教員約70名に「悩んでいる人への関わり方-10代のこころの不調にどう向きあうか-」と題して講義を行いました。今回は,自殺をしたがっている人への気づきのポイントに加え,特に,自殺と自傷行為の見分け方とその対応について解説しました。以下が講義内容の要約です。

・自傷は,自殺とは別の意図をもって行われる行為であるが,自傷行為が容認されない理由は以下のとおりである。①手首自傷,OD(薬物多量服用),過食嘔吐,その他の危険行為,望まないセックス・妊娠など,計算ミスからの心身の受傷・致死及び二次的な心理社会的障害を防ぐ。②人は感情表現の手段を変えることができる。感情をコントロールできるようになる方が生きやすい。③人は,本来求めているものを満足させる別の方法(オルターナティブ)を学ぶことができる。

・精神疾患が偏見や差別の対象にならないように,医療任せではなく,メンタルヘルスや心のケアについて,教員や保護者のメンタルヘルスリテラシーを高め,学校現場におけるメンタルヘルスの向上につながる取り組みが期待される。

・メンタルヘルスの向上には,ライフサイクルから見た心理社会的・漸成論的発達理論への理解と,家族,学校,職場,地域社会など,力動的・システム論的視点が求められる。

・子ども・若者が,主体性を意識化し,変化を起こす力を引き出すエンパワーメントの方法として,傾聴,対話,リフレーミング,行動アプローチが大切である。

第226回理事会報告

日 時:2022年12月12日(月)19時00分~20時35分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町 高松市本町9-3白井ビル403

事務連絡および周知事項,報告事項:省略

議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 会計に関すること(事前配布資料有):島津理事長から,11月期の会計報告について,説明資料を基に報告があり承認された。

第2号議案 ウイルスバスター契約更新に関すること:ウイルスバスターから歳末割引キャンペーン案内が届いたが,2023年4月以降の契約については,オンライン会議の導入に合わせて検討することで了承された。

第3号議案 香川県共同募金会テーマ募金に関すること:チラシ発送先リストについては,先の理事メーリングリスト上で加筆修正が行われたものを最終リストとしてAIYAシステムに宛名ラベル作成等の作業を依頼する。また,理事長からかがみ文と添付文書の案が示され,審議の結果一部修正したものを原稿とすることで了承された。また,発送作業は予定通り,12月29日(木)10:00からオフィス本町で行うことで了承された。

第4号議案 2022年度香川県地域自殺対策強化事業に関すること:ブロシュールの発送は,来年2月中をめどに行なうこと,また,今年度新規のファクトシートの作成作業に着手することで了承された。

第5号議案 「居場所づくり事業」に関すること:①ルポ(REPOS):「ルポ」の運営に関心がある者に居場所運営委員への就任を再度呼びかけることで了承された。②リトリートたくま:1名のスタッフから通勤距離の問題で辞退の意思表示があったため,現在ボランティアで参加している人材をスタッフとすることで了承された。利用者増へ対応するために,現在運営責任者に対して支払われている時給を半額にする案が,リトリートたくま担当者から示されたが,今後利用者増が見込まれるなかで,責任者の時給を減額することには慎重であるべきとの見解に到った。

第6号議案 オンライン会議のネットワークの構築に関すること:来年1月を目途に示される見積書を踏まえて審議を行うことで了承された。

第7号議案 1月の理事会日程に関すること:1月の第2月曜(9日)は祝日であるため翌週の1月16日(月)に変更することで了承された。

第8号議案 理事の休務に関すること:森本理事が,家庭の事情から,当面今年度末(2023年3月31日)まで休務すること,並びに一部の業務の引継ぎについては,さしあたり森本理事が代替可能な人材に打診を行うことで了承された。


編集後記:2015年以降,「全国地方議員研修会」という名称の会議が国会の議員会館などで6回開かれ,会議には地方議員が100人規模で参加,「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の友好団体の幹部が関わっていたことが分かりました。教団が重視する家庭教育支援条例を各地で制定することが呼びかけられ,自民党内で検討された「家庭教育支援法・同条例法案」には,国が家庭教育支援の基本方針を定め,生活習慣を身につけさせるなどの家庭教育における保護者の第一義的な責任が明記されています。法案の趣旨を先取りした条例は2012年以降,10県6市で制定され,地方議員研修会参加者の中には地元での「家庭教育支援条例」の制定に尽力した議員もいました。一方,国の法案は,国家による家庭への介入という批判が強く,国会提出には至っていません。2020年4月1日から香川県で施行された「ネット・ゲーム依存症対策条例の第6条には「保護者は,子どもをネット・ゲーム依存症から守る第一義的責任を有することを自覚しなければならない」とあります。子どもの健全育成の第一義的責任を保護者に負わせるという点では,家庭教育支援条例と同じものが底流として存在すると言えます。「やる気があれば誰にでもできる」というマッチョ思想では,保護者の第一義的な責任は果たせず,必要なのは,家族をいかに支援するかという政策科学に基づいた予算措置だと考えます。(H)