研修報告

香川県子ども・若者支援地域協議会
実務者会議及び実務研修会


マインドファースト理事  森本雅榮

2021年7月20日(火)9:00~12:00,香川県社会福祉総合センター7階 大会議室において,令和3年度香川県子ども・若者支援地域協議会実務者会議及び実務研修会が開催された。

コロナ禍の中,リモートでの講演会となり,関係参加団体は36団体だった。

前半の実務者研修会では「子ども・若者の現状と地域における支援の今後の在り方について」と題してCo-Work-A.LLCの代表社員田中成幸氏が講演を行った。

以下は,講演の要約である。

・子ども・若者の行動が「問題」という認識から子ども・若者が直面する「困難」という認識へと変わった。松山学園元院長によれば最近非行少年は少ないという。小学校と中学校の不登校は,平成25年から令和元年まで7年続けて前年より増加している。5年前と比較して,自殺・いじめ・不登校の件数が増加している。

・15歳から64歳までで引きこもり状態にある人は100万人を越えている。15歳~39歳は約54.1万人,40歳~64歳は約61.3万人で人口の約1.5%に当たる。
香川県に当てはめると,15歳~39歳は約4,410人で40歳~64歳は約3,440人で引きこもり状態にある人は合せて約8,000人になる。

・コロナ禍の影響もあり,若年無業状態の人口は急増(令和2年度時点87万人)。「若年無業の若者=ニート,怠けもの」という図式は成り立たない。それぞれの理由がある。シングル家庭における貧困もあり,約1割の子どもが貧困状態にある状況が続いている。

・児童虐待対応件数・検挙件数は過去最多である。社会的認知の高まりも背景にあり,見えなかったものが見える

ようになった。外国ルーツの子ども・若者へのケアは見落とされがちだが支援の必要性は高い。

・コロナ禍によりアルバイト収入が減額となり若者の困難度合いは深まっている。日本は世界と比べて孤立している人・孤独を感じている人の割合が高く,孤立・孤独は深刻な健康リスクにも繋がる。子ども・若者が直面する様々な困難が深刻化し社会的行方不明(孤立・孤独)化する。社会的行方不明化すると,どこにいるか,何をしているのか,誰も知らない状態となり支援が難しくなる。

・適切な支援が受けられず当事者55歳時に両親が死亡,80歳まで生活保護受給した場合の生活保護費支給額は23,340,000円である。18歳からアルバイトを始め65歳まで働き続けた場合の住民税額(最低賃金958円で算出)は8,828,928円で,23,340,000円+8,828,928円=32,168,928円,早期発見・支援による歳出減と歳入の合計,約3,000万円が国の財産となる。

○子ども・若者の困難をまとめると,「問題」を起こす子ども・若者は「困難」を抱える子ども・若者である。反社会的な行動から不登校,無業,引きこもりなどの非社会的な行動につながる。「困難」の多様化,多フェイズ化されてきているがさらにはコロナ禍で若者の孤立化が深刻化している。子ども・若者が直面する様々な困難が深刻化することで社会的行方不明になる。つまり,貧困,いじめ関係悪化,学業の躓き,不登校,中退,ひきこもり,非行,病気けが,仕事でのつまづき,退職失業,虐待などが相互に悪影響して社会的行方不明となる。

○多様な困難を抱える子ども・若者に社会ができることは何か?「孤立→自立」になるにはどうすればよいか?自立には経済的自立,精神的自立,社会的自立があるが,子ども・若者が自立するためにはどんな支援が必要だろうか。

以下次号へ続く。←


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メダリストは誰か?

中止または延期の声が多い中で,東京五輪が開催された。コロナ禍で強行しても,「ニッポンチャチャチャ」の高揚感がコロナ不安や政治への不満をかき消すという政権の思い上がりがあった。有観客やパブリックビューイングも検討されたが,結局無観客で開催,感染拡大する中で,菅首相は,外出を控えテレビ観戦で五輪の応援をと語った。外出自粛を強いられた上に,過ごし方にまでに口を出されるとは,国民も甘く見られたものだ。五輪は終わったが,「コロナに打ち勝った証」どころか,もはや感染爆発の状態だ。

IOCのバッハ会長は8日のIOC総会で,五輪の発展に寄与したことをたたえる「五輪オーダー(功労章)」で最高位の金章を菅首相と東京都の小池知事に授与すると明らかにした。メダルは競技だけでなく五輪功労者メダルもあるらしい。

五輪開催を巡っては,「選手には罪はない」と言う意見もあった。果たしてそうだろうか。東京五輪のメダリストは,感染拡大と国民生活の犠牲をしり目に得た勝利である。歴史的にどのように評価されるだろうか。日本が連日のメダルラッシュに沸く一方で,海外からはワースト・オリンピック・エバー(今までで最悪の五輪)と,辛辣なコメントが噴出している。

昔,地球へ襲来した宇宙人が,地球上の病原体への抵抗力ができていないために,死滅する映画を見たことがある。新型コロナウイルスも地球人にとって未知のウイルスに違いない。人類が,そうした危機に立っていることを考えれば,感染拡大の制御に集中すべきであろう。人々に誤ったメッセージを与え,多くの人流が発生する五輪どころではなかったはずだ。

政治は,若い世代のアスリートは特別扱いする一方で,社会基盤が脆弱な若者たちの不安を吸収できるような政策を打ち出せていない。マスメディアも,河原でバーベキューや路上飲みをする若者たちを悪者扱いするアングルでとらえる。一見,感染防止に非協力的と見られる若者の行動は,形を変えた抗議と見ることもできよう。

「今だけ,金だけ,自分だけ」の大人たちは,若者にどのような未来を残すつもりなのか。世界中の若者を巻き込んだストライキ運動を率いたスウエーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんは,"How dare you!"(よくもそんなことをできるわね!)という表現を繰り返して,各国の首脳らに温暖化対策の行動に出るよう強く訴えた。

一方,アスリートたちは,ポストコロナの若者たちの未来を考えて,「今だけ,金だけ,自分だけ」の世界に抗議の声をあげることはなかった。若い世代が翻弄され,搾取され,オリンピックは終わった。分断とひずみを残した五輪にメダリストを探すことは難しい。

(マインドファースト通信 編集長 花岡正憲)

第210回理事会報告

日 時:2021年8月9日(月)19時00分~21時00分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町 高松市本町9-3白井ビル403

事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 会員の異動に関すること:①会員資格の喪失扱いとなっている3会計年度会費未納となっている会員については,会員継続または退会の意思確認を行うため,退会届を添えて個別に連絡を行うことで了承された。②年会費を添えて1名の入会があった。入会理由としてマインドファーストでお手伝いできることがあれば協力したいとの意向である。

第2号議案 認定NPO法人グリーフワークかがわからの後援依頼に関すること: 標記法人から,10月17日開催のグルーフワークかがわNPO法人取得10周年記念シンポジウムの後援依頼があり,後援を受諾することで了承された。

第3号議案 会計に関すること:島津理事長から会計報告があり,了承された。

第4号議案 令和3年度香川県自殺対策連絡協議会に関すること:9月9日(木)開催の標記会議に柾が出席することで了承された。なお,本協議会は香川県庁においては,部局横断的に取り組んでいくことを趣旨としているにもかかわらず,構成メンバーに香川県子ども政策推進局子ども政策課が入っていないことから,子ども若者孤立化防止事業を所管している子ども政策課にレギュラー会員として参加を要請することで了承された。

第5号議案 「居場所づくり事業」に関すること:①REPOS:8月1日及び8日に開催された。今後,REPOSの運営について調査研究班を立ち上げることで了承された。②リトリートたくま:スタッフ会議において,コンサルテーション,施設管理,勤務日等に関する協議が行われた。コンサルテーションについては,9月から隔月に行うこと,三豊市の担当者との協議の場には,管理者以下5名が参加することで了承された。なお,近年社会的課題となっているヤングケアラーについて,市当局の取り組みの現状を確認することで了承された。

第6号議案 子どもの笑顔はぐくみプログラム助成金申請に関すること:エントリーを終了し,正式の申請書を作成の段階であるとの報告があり了承された。

第7号議案 ピアサポータートレーニング実施要綱に関すること: 標記要綱の見直しが行われ,広くピアサポーターに対するトレーニングを行うために,一部文言の訂正を行い,2021年8月9日付で改訂版を施行することで了承された。

第8号議案 認定ファミリーカウンセラー認定資格更新に関すること:8月22日(2021年度ファミリーカウンセラー養成講座・基礎コース終了日)から9月4日までを認定申請公募期間とし,認定面接日を9月19日と同26日とすることで了承された。

第9号議案 ファクトシート「パンデミックと心の健康」の作成に関すること:今年度事業として掲げられている標記ファクトシートの原稿作成に花岡が着手することで了承された。

第10号議案 世界メンタルヘルスデーに関すること:2021年度は,10月10日にキャンペーンを実施,「COVID-19と心の健康(WHO版抜粋)」と「世界メンタルヘルスデーファクトシート」を各1,000部増刷することで了承された。なお,準備に関しては,シルバーリボンはより良い素材を検討すること,印刷及び袋詰めは植松,花房,森本が担当し,印刷は外部で行い領収書をとること,シルバーリボンの説明カードの袋詰めはそれぞれの自宅で行うことで了承された。


編集後記:わたしたちの国では,マインドファースト通信No.189(2021年2月号)で触れた正に「プロクルステスの寝台」を地で行くようなことが,いま起きています。COVID-19の感染拡大で,コロナ病床が不足,政府は重症化リスクの低い感染者を自宅療養とする新方針を打ち出しました。こうした大切なことが,分科会に相談も報告もなく閣議で決められたことに批判が集中,結局,中等症患者は原則的に入院の対象とする方針を明確化しましたが,政権のコロナ対策の迷走ぶりには目を覆うものがあります。医療資源に限りがあるとはいえ,このような事態に備えて,療養体制を整えてこなかった政治の責任は重大です。ベッドの数に合わせてコロナ対策を行えばよいとでも考えていたのでしょうか。感染爆発の中にあっても,専門家の意見や科学的根拠を軽んじる現政権からは,相変わらず危機意識と感染防止のための強いメッセージが伝わってきません。(H)