技術援助

2018年度
ゲートキーパー普及啓発事業

マインドファースト理事長 島津昌代

2018年6月18日(月),徳島文理大学志度キャンパスにて同大学薬学部6年生19名を対象にゲートキーパー普及啓発事業が行われ,マインドファーストから島津が講師として派遣されました。同大学では,「予防医学」の一環として,将来,薬剤師として医療に従事することになる学生に,自殺予防のためにできることを学ぶ機会を設けているそうです。

初めに,主催者の香川県精神保健福祉センターから,香川県の自殺の現状とゲートキーパーの役割について解説があり,続いてマインドファーストから「自殺予防の基礎を学ぶ~自殺予防のために私たちができること~」と題して講義を行いました。以下は,その概要です。

まず,薬剤師という職業は,薬についての情報提供や服薬指導だけでなく,最近では「かかりつけ薬剤師」という位置づけで身近な健康相談できる存在にもなってきており,ゲートキーパーとしての働きも大いに期待されることをお伝えして,「自殺をめぐる文化的背景」や一般的に思われている「自殺にまつわる誤解」について話しました。特に“自殺について話すことはかえって自殺の危険性を高めてしまう”と思われていることが問題です。なぜなら,死にたいと思っている気持ちと向き合うのを避けることは,その人をより孤独な状態に追い込んでしまうからです。また,“死ぬ勇気があれば何でもできる”“死ぬくらいなら辞めれば良い”という普段の理性が働かないような

心理的視野狭窄状態に陥ることがあり,それが自殺につながり得る危険な状態であるということを説明しました。

こうした心理的視野狭窄状態に陥ることを防ぐには,その人が今感じているつらさや苦しさに共感してくれるコミュニケーションが重要になります。ただ,それを支えようと思う人も自分一人ですべてを解決することはできません。ゲートキーパーの役割が「きづく」「かかわる」「きく」「つなぐ」となっていることは,苦しんでいる人が孤立してしまわないように支えることと,支える側もひとりで抱えるのではなく,社会の機能のひとつである「支え合う」ということを再構築していくことでもあると言えます。

講義の最後には,今苦しんでいる友人への関わりについて,「きく」(傾聴する)ための留意点についての質問を受け,参加者が積極的な姿勢で自殺予防について学ばれたことがうかがえました。


報告

平成30年度
第1回高松市自殺対策推進会議

マインドファースト理事長 島津昌代

2018年6月5日(火),新しくできた高松市防災合同庁舎(危機管理センター)会議室において高松市自殺対策推進会議が開催されました。この会議は,自殺対策基本法の規定に基づき,市が自殺対策事業を総合的に推進していくために設置されたもので,保健・医療・福祉・労働・警察・支援団体といった各分野に行政が加わった23名の委員によって構成されます。←




→マインドファーストは支援団体として理事長の島津が委員に任命されました。

会議では,高松市保健センター所長から,この会議を通して総合的な自殺対策,情報共有と連携を進めていきたいという旨の挨拶があり,続いて会長に学識経験者である鈴江毅氏(静岡大学教授),副会長に田中克幸氏(高松市健康福祉局長)が就任されました。

その後,高松市の自殺の現状について保健センター所長から説明があり,さらに高松市自殺対策計画の概要について説明されました。この計画は,国の自殺総合対策大綱における重点施策にそったもので,以下の12項目あります。1)地域レベルの実践的な取組への支援を受け,自殺対策を推進していく。2)市民一人ひとりの気づきと見守りを促す。3)自殺対策の推進に資する情報の収集及び提供等を図る。4)自殺対策に係る人材の確保,養成及び資質の向上を図る。5)こころの健康を支援する環境の整備とこころの健康づくりを推進する。6)適切な精神保健医療福祉サービスを受けられるようにする。7)社会全体のリスクを低下させる。8)自殺未遂者の再度の自殺企図を防ぐ。9)遺された人への支援を充実する。10)民間団体との連携を強化する。11)子ども・若者,高齢者の自殺対策を推進する。12)勤務問題による自殺対策を推進する。それらの説明を受けて,行方不明者の発見後の支援体制をどうするか,未遂者等ハイリスク者への支援や,そのための個人情報の取扱いをどうするか等の質問が出て,今後の課題も提起されました。

今回委員として招集された各関係機関が具体的にどのような取組を行っているか調査票に基づいて集約・整理され,7月から「高松市自殺対策計画(案)」の作成作業に入り,11月頃第2回目の推進会議が開催されて,年度末に「高松市自殺対策計画」策定という運びになるようです。


第169回理事会報告

日 時:2018年7月9日(月)19時00分~21時00分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町
高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 ユーザーの居場所作り事業に関すること
7月3日,2018年度第1回居場所づくり運営委員会が開催された。花崎泉委員から退任の意向が表明された。今後は,当面,山奥委員宅において,概ね週1回居場所を開催するとの報告があり,了承された。また,交通手段が限られた利用者の利便性に配慮して,今後とも利用しやすい居場所の開催場所の開拓に取り組んで行くこと,居場所のスタッフの活動に対する有償化を検討して行くことで了承された。

第2号議案 今年度の役割分担に関すること
理事長から案が示された。ひきこもり家族のグループワーク「おどりば」については,参加者数が伸び悩んでいること,また,ファシリテーターが固定化しない運営面での課題もあることから,開催場所,開催時間帯の再考を行なうことで了承された。居場所づくり事業については,担当理事を島津とし,執行部からは花岡理事がスーパーバイザーとして出席することで了承された。

第3号議案 傾聴・相談力セミナーに関すること
担当理事の吉田から案について説明があった。会場借上げ料として,上限2,000円を手当てすること,周知方法は,地方紙のイベント版,SNS(Facebook,ショートメッセージ等)を活用すること,事前申し込み・問い合わせは,主宰者の吉田理事の携帯電話にすることで了承された。また,参加対象者は特に定めないものの,守秘義務が守れるものを明記しておくことで了承された。

第4号議案 相談料の減免に関すること
当法人の公益性に鑑み,初回相談は無料,2回目以降は正規の相談料で向こう6か月を試行期間として実施することで了承された。なお,相談申込者には,相談依頼があった段階で電話受理担当者から説明を行うこととした。

第5号議案 事務局管理業務等の見直しに関すること
法人の事務作業としては,経理事務に加え,オフィス本町の管理,渉外,郵便物の収受,諸官庁等への届け出事務,事務局電話並びにメール等への対応等多岐にわたっている。現在,こうした事務作業の殆どを理事長が行なっているが,理事長の負担軽減のために,専従事務局員の配置も含め,まず事務量と事務内容を洗い出してみることで了承された。


編集後記:「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子どもを作らない,つまり生産性がないのです」 社会的弱者・少数者をつくり出して,血祭りにあげ,耳目を集めることで人心を支配しようとする。自民党杉田水脈議員の発言が大きな批判を浴びています。東京医科大学の入試では,女子受験生が不利になる得点操作を行なっていたことが明らかになりました。「機能する医師」でありさえすれば,患者にとって性別は直接関係がないことです。女性の場合だけ『女医』という言葉があり,これは,やはり差別用語なのでしょう。こうした不公平の解消は,本来政治の役割なのでしょうが,現政権は,「若さ」と「健康」と「生殖機能」と「労働力」がある「日本人男子」を中心にした国づくりに向かっており,政治が必要でない社会を目指すという矛盾に気がついていないようです。「性」とはあくまでも,出生時に割り当てられた性別で,生物学的概念です。性に関する政治や社会の側の差別に対しては,性と言う概念の脱構築に向けて国民の側からの活動も必要でしょう。生物学的には女であっても,自分は異なる性の自己意識を持っているから,男性として或いは性別なしとして,大学受験に出願するとか,女性の求人に対しては,男性が自分は主観的には女性だと言って応募するとか。こうした,国民一人ひとりの腹が座った活動も大切でしょう。(H.)