世界人権宣言採択から70年

~私たちの社会に人権意識は根づいたか~

先月,テレビ朝日の女性記者が,財務省の財務事務次官に対する取材の過程でハラスメントを受けた。上司に報告したが,適切な対応がなかったために,録音した相手の声を週刊誌に持ち込み発覚した。

社員が不快刺激にさらされ,人格権が傷つけられていることに対する会社側の問題意識も低い。労働者への企業側の安全配慮義務という点でも,看過できない問題である。

このセクハラ事件を巡っては,当の事務次官は「言葉遊び」の範囲だと釈明し,また,任命権者である麻生太郎財務大臣は,「被害にあった女性が名乗り出ない限りセクハラの事実の認定はできない」と居直った。さらに,マニラで記者会見し,「セクハラ罪はない」という強弁を吐いた。あまりにも無知で,国際感覚の欠如には驚くばかりである。

昨年10月,自身が受けたレイプ被害について記した著書『Black Box』を出版した女性ジャーナリストは, 2015年4月レイプ被害に遭い,被害届を提出した。被疑者に対して準強姦罪の容疑で逮捕状が発布されたが,直前になって警視庁刑事部長から異例の待ったがかかり,逮捕は見送りになった。また,最初に警察に行った時は「良くあること。捜査も起訴も出来ない」と言われ,その後,等身大の人形を相手に,レイプ現場の再現をさせられるという捜査過程における人権への配慮のなさも明らかになっている。

世界人権宣言は,すべての人民とすべての国が達成すべき基本的人権に関する宣言である。今年で採択されて70年になる。世界人権宣言第1条には,「すべての人間は,

生れながらにして自由であり,かつ,尊厳と権利とについて平等である。人間は,理性と良心とを授けられており,互いに同胞の精神をもって行動しなければならない」とあり,国家による介入を拒否することを本質とする「自由権」が基本になっている。

このところ,セクハラやレイプ事件を通して見えてきたのは,すべての人が尊厳を傷つけられることなく,自由でいられる健全な人権感覚がいまだに育っていないという,私たちの社会の姿である。

日本は,他国と国境を接することなく,陸路での外国との往来もない。普段日本語以外を必要としないで生活ができる閉ざされたマーケットの中にいる。事情が異なる多様な価値を持った他者の存在を強く意識することが少なく,多言語異文化による検証が起こりにくい。他者の事情,信条,感情,願望,希望,意図などを理解し,想像する能力が育ちにくい。そのため,一人ひとりの事情や事実が軽んじられ,権力者の恣意,マスメディアの論調,地域社会の雰囲気などに左右されやすくなる。

国家とは,領土,人民,主権がその概念の3要素とされる。そのうちの一つ「主権」とは,他の意思に支配されない国家統治の権力のことである。日本は,日米安保条約第6条に基づき米国との間で日米地位協定を結んでいる。日本の航空法は適用されず,自国アメリカでは飛行が禁止されている空域や低空夜間に米軍機の飛行が行われている。オスプレイは,沖縄だけでなく,首都圏の上空も飛ぶ。米軍機の事故が起きても日本側は調査に関与できず,アメリカ兵が公務中に起こした犯罪の裁判権はアメリカ側にある。

地位協定は日本国憲法より上にあり,日本の統治機構すなわち主権が無力化されている。こうした国は,世界←




→の中で日本だけである。属地主義に基づく主権の放棄が,人権問題に影を落としていることは否めない。主(あるじ)に仕える奴隷が同じ奴隷の人権を認めるだろうか。

人は生まれながら自由(born free)である。人に迷惑がかからなければ,どのような生き方をするかは自由である。国家から制約も強制もされず,自由に物事を考え,自由に行動できる精神的自由権がある。

日本が明治維新で西欧から学んだことの一つが,「人権感覚」であると言われる。主権者意識が希薄な国民は,他者の人権にも鈍感になりがちである。わが国において,まず自分のことは自分で考え,自分で決めるという自由権があるということを自覚し,それを根づかせることは生やさしい課題ではなさそうだ。

(マインドファースト通信 編集長 花岡正憲)

第166回理事会報告

日 時:2018年4月9(月)19時00分~21時00分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町
高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 ユーザーの居場所作り事業に関すること:居場所づくり企画運営員会の委員である花崎,山奥両氏が出席し,4月6日,今年度本事業の原資となる香川県共同募金会広域助成事業の助成金交付式に出席した。両委員からは「早く実現したい」という声が挙がった。事務手続きの煩雑さと有効に資金を獲得する術等が難しく,これらの作業に手間がかかって,実質的な活動になかなか結び付かず,じれったさを抱えている。事務員を雇いたいという要望あり。実現した際の具体的なイメージから逆算し,現状何をするべきかを考える等の提案があった。

第2号議案 平成30年度募金(平成31年度事業)香川県共同募金会の広域助成事業の募集に関すること:今年度は申請しないことを確認し了承された。

第3号議案 オフィスの鍵の管理に関すること:花岡理事から原案を作成する旨の提案があり了承された。

第4号議案 NPO認証取得10周年記念シンポジウムに関すること: 当初予定していた講演者が日程的に調整がつかないため,地元で活動している人を探してみることとした。

第5号議案 傾聴セミナー(仮称)に関すること:相談力・傾聴セミナーのコンセプトとして,すでに私たちが使っている「人の話を聴くこと」を傾聴スキルとして意識的に使えるようにし,さらに傾聴をしてもらいながら,誰に何をどのように相談したらよいかを学び,日常生活の中で生きたカウンセリング行動を定着させることを目的とする旨,吉田理事より説明された。

具体的な場所等のスケジュールについては,別途企画書を提出することとして了承された。

第167回理事会報告

日 時:2018年5月14(月)19時00分~21時00分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町
高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略

議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 ユーザーの居場所作り事業に関すること:居場所づくり企画運営委員会の委員である花崎,山奥両氏が出席し,第10回同委員会と暫定的居場所の開催状況について報告があった。4月6日,今年度本事業の原資となる香

川県共同募金会広域助成事業の助成金交付式に出席した。

暫定的とは言え居場所が発足し,運営面において,スタッフと利用者の立場を明確にしておくこと,利用者契約の締結,法人のバックアップなどの必要性を感じている,という委員からの意見が出された。法人としては,居場所活動を支援し,居場所と法人の関係を明確にしておくためにも,居場所の管理者候補の推挙があれば,理事長が任命することで了承された。

第2号議案 平成30年度(平成31年度事業)香川県共同募金会の広域助成事業の募集に関すること:今年度は申請しないことを確認し了承された。

第3号議案 平成28年度(平成29年度事業)香川県共同募金会テーマ募金事業の平成30年度繰越金と事業計画変更に関すること:本事業の平成29年度今年度執行総額が313,174円となり,当初の予算額(助成金額)495,991円を下回ったため,差額の182,817円は,一旦香川県共同募金会へ変換し,今年度テーマ募金事業募金額466,476円と合算した649,293円で事業計画の変更申請を行うことで了承された。

第4号議案 平成30年度(平成31年度事業)香川県共同募金会テーマ募金事業に関すること:第3号議案の決定を踏まえ,今年度テーマ募金事業費649,293円に関する事業計画変更の審議が行われた結果,NPO認証取得10周年記念シンポジウムの開催費用を追加計上することで了承された。

第5号議案 オフィスの鍵の管理に関すること:花岡理事から原案が示され,誤字脱字の訂正が行われ,平成30年5月14日付で施行されることで了承された。

第6号議案 2018年度ファミリーカウンセラー養成講座・基礎コースに関すること:現在時点の申込者と受講申込予定者は,各1名である。講師会招集のための日程調整を理事長が行うことで了承された。

第7号議案 NPO認証取得10周年記念シンポジウムに関すること:開催に向けてワーキングチームを設けることが了承された。

第8号議案 総会の準備に関すること
(1)理事長から2017年度事業報告及び決算案が示され,今後意見集約を行うことが了承された。
(2)会計並びに事業監査を6月1日に行うことで了承された。
(3)理事長から2018年度事業計画及び予算案が示され,今後意見集約を行うことが了承された。
(4)議案書の作成は外注し,6月3日までに発送することで了承された。
(5)総会案内文書,出欠確認葉書,会費納入依頼文等を整え,外注することで了承された。

第9号議案 平成30年度「NPO法人運営のためのステップアップ事業(専門家派遣事業)」に関すること:香川県から周知があった標記事業については,今回は当法人として活用の必要がないことで了承された。

編集後記:今年3月2日,5歳の女の子が,虐待されながら、両親に対して「ゆるしてください おねがいです」とノートに言葉を残して,衰弱して亡くなりました。子どもは,親を選んで生まれてくる自由はありません。悲惨な幼児虐待をみていると,養育能力のない親のもとに生まれ育てられることを拒める子どもの自由権を考えなければならない時代になっているのかと考えてしまいます。一方,6月17日の父の日,子どもが父親への感謝の気持ちを伝える場面がテレビで放映されていました。「お父さん,お仕事頑張ってね」「お父さん,お仕事ありがとう」 子どもにとって父親とは何か。こうした父親像を子どもに与えている家族や地域社会も気になるところです。(H.)