ゲートキーパー研修会報告

~香川高等専門学校高松キャンパス~

マインドファースト理事長 島津昌代

去る11月9日(木)14時30分から15時45分,香川高等専門学校高松キャンパスにおいて,香川県主催のゲートキーパー普及啓発事業の一環で「自殺予防の基礎を学ぶ ~自殺予防のために私たちができること~」と題して,1年生および教員を対象に講演させていただきました。

研修会は,まず,香川県精神保健福祉センターの方からゲートキーパーがどのようなものかという説明と,若者の死因の1位が自殺であることや香川県の自殺の現状と香川県における自殺予防の取り組みについてのお話がありました。

ゲートキーパーと言われても,15,6才の若者にはなかなかピンとこないかもしれません。そこで,今回の研修会では,ワカバというグループの楽曲「あかり」のDVDが最初に紹介されました。この歌は,自殺したファンのことを知って書かれたもので,2011年度の内閣府『いのち支える(自殺対策)プロジェクト』キャンペーンソングに起用されていますが,“泣きたくても泣けない”若者のつらく孤独な気持ちとそこに寄り添うことがどんなことなのか,イメージをふくらませてもらえたのではないかと思います。

講演の方では,先日,座間市でおこった事件を引き合いに出しながら,話を進めていきました。この事件は,犠牲者の大半が「死にたい」と思っていた若者です。彼女たちは本当に「死ぬ」ことを望んでいたのでしょうか?

決してそうではなかったことが事件報道の中からも浮かび上がってきていました。辛いことがあって,生きていることを苦しく感じていたから「死にたい」と思い,その気持ちを誰かに受け止めて欲しかったから犯人と会ってしまったのでしょう。もしここで犯人ではない,誰か別の人に受け止めてもらえていたら…。辛さを打ち明けられる友達がいたなら,このような悲劇は起こらなかったかもしれません。実際,友達関係の中で気持ちが支えられて,犯人との接触を断つことができた,という人も居たようです。

「死にたい」と思うことと「死ぬ」ことはまったく別物であり,それは「死ねば楽になるのではないか」と思うくらい切羽詰ったつらい状態にあることを訴えるSOSです。「死にたい」を文字通り聞くのではなく,その言葉の背景にある気持ちを翻訳してきく必要があります。もし,自分がこのような辛い状態に陥った時に大切なことは,一人で思いつめないこと。また,友達から「死にたい」ということを打ち明けられたときは未成年同士で悩むのではなく,信頼できる大人に相談することも大事です。特に,友達同士で支えあうのは大事なことですが,未成年だけでどうにかしようとすると共倒れになりかねません。そうしたことも含めて,今回の講演では,どのように相談を切り出すか,つまりSOSの出し方という点にポイントをおいて話しました。

世間を騒がせている,自分達と年齢の近い人が犠牲になった事件であっただけに,関心をもって聴いていただけたように思われました。←




→「子連れで議会」から見えてくるもの

11月22日,熊本市の女性市議が生後7か月の赤ちゃんを抱いて本会議に出席しようとした。議長と議会事務局職員らがこの市議のもとへやってきて何か話し合い,その後議長室へ移動して協議が行われた。この市議は赤ちゃんを友人に預け本会議に出席した。

議場に入れるのは,議員や議会事務局職員,理事者などの幹部職員,議会が求める関係者などに限られ,議員が連れてきた乳児は「傍聴人」の扱いになるのだと言う。傍聴規定では,傍聴人は「議場に立ち入ってはならない」とあり,議員と一緒に入るのは,原則,許可できないと言う。この市議は,妊娠中から事務局にかけ合っていたが,何の対応もしてこなかった。前日には議長に電話で相談もしていたと言う。

赤ちゃん連れの議員の対応は,自治体によって,かなり異なる。沖縄県北谷町では,9月定例会前に,女性議員が議会事務局に相談し,事務局は「女性議員が働きやすい環境づくりにつながる」と保育スペースを提供することが実現した。

熊本市の女性市議は,議事開始を40分遅らせた理由で厳重注意の処分を受けた。けじめをつけることを優先し,子育てをしながら議員としての仕事を続けて行くための議論が行われていない。

女性が議会へ進出しやすくなるために,議会においても,あらかじめ受けいれ態勢を整えておく必要があるだろう。こうしたことが起きると,必ず「託児所」をつくれば良いと言う意見が出てくる。しかし,「託児所をつくったから,会議中は,子どもを託児所へ置いてこい」と言うことになれば,子育ての選択肢を狭めてしまう。

国は,少子化は国難と言う。そして,子どもを4人以上生んだ女性を厚生労働省が表彰すれば良いと言った場当たり的発言をする国会議員が出てくる。その一方で,妊娠,出産,育児を両立させる試みには,バッシングするようなことをしてしまう。国が本気で子育ての環境を整備しようとしないことがこうした事態を招いてしまっている。

ネット上には,熊本市議の行動に対して,好意的な意見もあるが,「パフォーマンスでしかない」「赤ちゃんを預けられる友人がいるのなら初めからそうすれば良かった」といった批判的意見も見られる。私たちに社会における子育てのあり方に一石を投じた出来事になった。外国では,赤ちゃん連れの本会議への出席や会議中の授乳も認められているところもある。

http://www.huffingtonpost.jp/2017/11/22/kumamoto_a_23285061/

(マインドファースト通信 編集長 花岡正憲)


第161回理事会報告


日 時:2017年11月13(月)19時00分~21時05分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町
高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 ユーザーの居場所作り事業に関すること:11月7日,オフィス本町において第4回居場所づくり企画運営会議が開催された。「空き家/空き室」探しのチラシについて協議を行なった。連絡先の名称を居場所づくり事業部とすること,四国新聞への折り込み広告として配布すること,掲載写真のプライバシーへの配慮などに関する意見が出された。また,ピアワークス参加者へピアサポート養成講座への呼びかけを行う提案があった。

第2号議案 NPO取得10周年記念シンポジウムに関すること: 標記シンポジウムの開催日を2018年1月28日と定め,会場も確保していたが,第4回企画運営会議において,時間的に講師の依頼交渉は不可能であろうとの結論に至り,実行委員会は継続して開催,来年度事業として,本計画を練り上げることとしたことについて了承された。

第3号議案 ブロシュールの改訂に関すること:家族メンタルサポートセンター フォークス21のブロシュールについては,これまでの相談事業における経緯が盛り込まれてきたため統一感がなく,レイアウト等の見直しを行なった方が良いと言う意見がある一方で,現行のブロシュールは相談利用者のガイダンスとして利用しやすいと言う意見もある。各種情報媒体がある中で,マインドファーストにおけるブロシュールの位置づけを再確認するとともに,カウンセリングの指針作りを検討することで了承された。

第4号議案 平成29年度(平成30年度助成事業)テーマ募金に関すること:11月15日に香川県共同募金会で開催の連絡会に花岡理事が出席する。現在,印刷業者から2つの案が示されているチラシは,第1案を採択する。チラシ発送準備作業は,12月29日午前10時から行う。以上のことが了承された。

第5号議案 ファミリーカウンセラー養成講座シニアコースに関すること:2月12日開催の標記養成講座については,①講師謝金は,3名宛源泉徴収税を差し引いた額で講師各33,000千円とする。②受講定員は30名とし,支援活動を行なっているものを対象とする。③受講料は,一般8,000円,マインドファースト会員5,000円とする。④受講申し込みは,FAXないし郵送とする。⑤本講座は支援活動現場を持つ者を対象とするため,受講申込欄には所属等を明記する欄を設ける。⑥本養成講座は,5年ごとの認定ファミリーカウンセラーの資格更新要件の一つとして位置づける。⑦チラシ案は花岡が作成し,印刷部数は1,000部とする。⑧発送先は,医療機関,相談機関,福祉機関,教育機関等とする。⑨チラシ発送準備作業は,12月10日(日)13時からとする。以上のことが了承された。

第6号議案 ピア活動広報のためのDVD制作への協力依頼に関すること:香川県の標記事業について,事業企画書等の提示を求め,当法人のピアサポートライン事業の紹介について協力することで了承された。

第7号議案 子供の喪失体験の支援に関するファミリーカウンセラーを対象とした研修に関すること:本研修は,5年ごとの認定ファミリーカウンセラーの資格更新要件の一つとして位置づけ,今年度内に実施することで了承された。

第8号議案 ピアサポーター養成講座に関すること:新たに始まった同行援護も含め,3回にわたるピアサポーター養成講座を実施することで了承された。


編集後記:私たちの社会には,それぞれの事情を抱えた人々の生活の営みがあります。議会も,障害のある人,LGBT,若者,高齢者,そして赤ん坊を抱えた人など,様々な事情の中にある人々で運営されてこそ,生活者に根差した政策の実現が可能になるというものです。「今は健康とお金と若さがある日本人成年男子」だけで,それ以外の事情の中にある人たちのことを決めないでもらいたいです。多様性を認めあってこそ,本来の活力がある社会と言えますが,硬直化した「おっさん文化」の狭間に落ち込む人々が少なくありません。障害当事者の間で使われているスローガン“Nothing about us without us”(私たち抜きに私たちのことを決めるな)は,すべての生活者に当てはまります。(H.)