ゲートキーパー普及啓発事業報告

香川県消防学校専科教育救急科

マインドファースト理事 花岡正憲

2017年2月3日(水),香川県消防学校専科教育救急科の生徒41名を対象にゲートキーパー普及啓発事業が行われました。マインドファーストからは,講師として島津と花岡を派遣しました。

初めに,主催者の香川県精神保健福祉センターから,香川県の自殺の状況について解説があり,引き続き,マインドファーストから,「自殺予防の基礎を学ぶ~自殺予防のために私たちができること~」と題して,講義と演習が行われました。

講義では,「自殺とはなにか」「ゲートキーパーの役割」「自殺に関する神話」「自殺の防御因子」「気づきのポイント~だれかが自殺をしたがっているのは,どうすればわかるのか?~」「わたしは,なにができるのか?」「自殺が起きてしまったら」「自殺を考えている人の心理」などについて,解説を行ないました。特に,自殺の可能性がある人への接し方として,自殺する気があるかないかストーレートに尋ねること,あなたが心配していることを伝えることが大切であることを強調しました。

講義の後は,「生と自殺の間に架かる橋 -The bridge between suicide and life-」のビデオの供覧を行ないました。サンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジでは,1937年の開通から今日までに1,600人以上の人が橋から飛び降り亡くなっています。今日も,絶望の淵で,生きることに関心を失い,自殺を美化した人たちが,死に場所をここに求め訪れますが,そのような人たちに,真正面から向き合うことが,彼らの命を救い人生の転機になるかもしれないと考え,橋周辺で数百人の自殺志願者に対処してきた,カリフォルニア・ハイウェイ・パトロールに23年間努めていたケビン・ブリッグス氏のレポートです。

演習では,6つのグループに分かれ,ワールドカフェを行ないました。「現在の自殺について,何が問題だと思いますか?」「問題の解決のためにはどのような対応が可能ですか?」「あなた自身は何ができそうですか?」について,3ラウンド行いました。

時間的な制約から,グループ相互の意見交換はできませんでしたが,講義終了後のアンケートでは,「自殺予防には,他人への関心を持つこと」「同僚や友人の変化に気づくために,日頃からのコミュニケーションが大切」「社会環境の改善」「ゲートキーパーとしての知識を身につけること」などの回答が寄せられました。

さらに,今回は,講義前と講義後の2回にわたり同じ設問のアンケートを行ないました。それによると,全設問において,講義後の自殺に対する理解や認識が,深まっていることが分かりました。

セミナー・研修会報告

「香川県自殺対策トップセミナー」

マインドファースト理事 上間勇治

去る平成29年1月25日(水)に香川県社会福祉総合センター7階大会議室において,「香川県自殺対策トップセミナー」が行われました。

本セミナーは,平成28年4月の改正自殺対策基本法において,「都道府県と市町村は自殺対策計画を定めるものとする」との策定が義務付けられたことを受けて,市町長,市町自殺対策担当者,自殺対策関係機関,民間団体等を対象に,地域における自殺の状況や自殺対策に関する理解を深める事を目的として開催されたものです。

当日はNPO法人自殺対策支援センター ライフリンク代表の清水康之氏による「誰も自殺に追い込まれることのない”生き心地の良い香川”をめざして」と題する基調講演が行われました。

清水氏によると,「自殺者には自殺に及ぶパターンがある」と言うことです。これは,ライフリンクの自殺者遺族の聞き取り調査から見えてきたもので,「自殺は平均すると,4つの要因が複合的に連鎖して起きている」そうです。

また,清水氏は,この自殺に至るプロセスに対し,「自殺の危機経路」と言う概念を打ち立てました。

そして,自殺行為に関して一定の規則性があるのなら対応は可能であると言う結論に達しました。なぜなら,それぞれの解決策は各関係機関に既にあるからです。←




→ですから,4つの支援策を連携して行うことが自殺対策として最も重要な事であると言うことでした。

また,ライフリンクは足立区「こころといのちの相談支援ネットワーク」において自殺対策戦略会議を年4回行っておりますが,「つなぐシート」でデータ共有をして確実に支援する体制をとっており,その効果も確実に数字として出ています。

以上のことから,当団体も今後はさらに各機関と密接に連携して地域住民の命を守るために活動して行きたいと思いました。


「平成28年度 自殺予防のための対応力向上研修会」

マインドファースト理事 上間勇治

去る平成29年1月26日(木)に香川県立文書館 視聴覚ホールにおいて,「自殺予防のための対応力向上研修会」が行われました。

講義は,「自殺未遂と自傷行為~自殺予防の見地から~」 と題して,帝京大学医学部・精神神経科学講座教授,林 直樹先生が講師を担当されました。以下,大まかですが講義の内容をお伝えしたいと思います。

自殺未遂・自傷行為(SB)の臨床的特徴について,救急医療機関における自殺企図者は,若者女性に多く,身体的軽傷が多い。

自殺未遂・自傷行為の自殺との関連では,自殺未遂患者は10.9倍自殺しやすく,自殺者の44%に自殺未遂の既往があり,自殺者の36%に自殺未遂,または自傷行為があった。

自傷・自殺未遂の実態と背景,経過について,林先生の研究では,孤独感,絶望感,悲しみ,虚しさ,罪悪感,恥ずかしさが50%以上の患者から報告された。

自傷行為のきっかけの多くが身近な対人関係のトラブルで約60%。それらは学校でのいじめや親との対立,級友との喧嘩や恋人との行き違いといった出来事,試験のプレッシャーや劣等感を生じる出来事などがきっかけになる。

自傷行為者・自殺未遂者の特徴として,精神的にひどく傷ついている。辛い感情に苛まれ,対人関係等におけるトラブルに見舞われている。うまく助けを求められない。自分を支える,自分を生きると言う課題の危機。養育期の問題,精神障害など。

自傷行為者・自殺未遂者への対応で,援助者の姿勢は「誤った行動」として戒めると言う姿勢を持つのは厳禁である。また,関係者とのチームワークは重要である。

そして,治療については精神科治療が必要で,動機づけ面接,認知療法,認知行動療法,弁証法的行動療法,薬物療法などが効果的である。

なお,自傷行為・自殺未遂については精神障害と重なるとリスクがさらに高まる。

第151回理事会報告


日 時:2017年2月13(月)19時00分~21時00分
場 所:マインドファースト事務局オフィス本町
高松市本町9-3白井ビル403
事務連絡および周知事項,報告事項:省略


【議事の経過の概要及び議決の結果】

第1号議案 四番丁コミュニティセンター4月以降の予約に関すること:おどりば(18時~21時),サバイビング(13時~16時),総会(18時~21時)の予約を上間理事が直接センターに確認しながら申し込むことで了承された。

第2号議案 ピアサポーター資格認定規則に関すること:本規則の承認がされた。 附則 平成29年2月13日から施行する。

第3号議案 ピアサポータートレーニングに関すること:花崎理事からピアサポータートレーニング案の説明がされ,以下のことが承認された。①3回目終了後に認定委員会を開催すること,②必要時は4回目を実施すること,③新人ピアサポーターが電話相談に入る際には二人体制とすること,④トレーニングの講師謝金は5000円/80分とする。

第4号議案 ユーザーの居場所作り事業に関すること:花崎理事から進捗状況の報告があった。次回の会議は,2月27日に開催予定である。その会議で企画会議の名称案を作成し提案をする。香川県共同募金の使途について,費目替えをして使いたい旨を運営委員に相談後に,共同募金の担当者今谷氏に相談することが承認された。

第5号議案 香川県共同募金会テーマ募金に関すること: 花崎理事から2月6日付で募金15件,そのうち10件が領収書の希望があったこと,ファミリーカウンセラーと会員の内海氏,冨岡氏に募金依頼のちらしを各50部送付したことの報告があった。名簿作成については,花崎理事が事務処理後に花岡理事に書類を送付し作成することが承認された。

第6号議案 2016年度香川県地域自殺対策強化事業に関すること:1)子どもの喪失体験の支援事業:中添理事作成のブロシュール案への意見をもとに,花岡理事がブロシュール形式案を作成することが了承された。2)各事業のブロシュール,啓発カードの作成:以下のことが承認された。①ピアサポートライン PRカード 5,000枚 花崎理事がAIYAに発注,配布先:市役所,保健センター等②サバイビング PRカード 10,000枚 島津理事長が遠山氏に発注③子どもの喪失体験ブロシュール・PRカード 2,000枚 花岡理事が案作成 配布先:幼稚園,保育所,小中高校の養護教諭等④自殺予防カウンセリングのブロシュールは今年度作成しない。

第7号議案 2017年度ファミリーカウンセラー養成講座に関すること:丸亀町レッツカルチャールームに,使用申し込みを行った。(6/25,7/2,7/9,7/23,7/30,8/6) 詳細は,次回のファミリーカウンセラー会議で検討することが了承された。

第8号議案 2017年度総会の準備に関すること:6月19日(月) 会場は四番丁コミュニティセンターで開催予定である。次年度は役員改選になるため理事継続の意志について,島津理事長から確認がされた。

編集後記:森友学園問題をめぐり,首相夫人の行動が公人か,それとも私人として行われたかという議論を聞くにつけ,私たちの社会は,まだそうしたことが議論になる段階なのかという思いです。公人イコール公務員(public official)として,狭くとらえる向きもありますが,役人だけが公人ではないことは言うまでもありません。公的人格として役割や権限や責任を取り得る立場にいる人は,公人であることに議論の余地はありません。国会議員が,私人として某神社を参拝したり,参拝はしないが私費で玉串料を払ったりしたところで,私的行為とは見なされないことを見ても明らかです。私たちNPO法人の役員や社員という立場は,公人であると理解しています。publishは,本などを「出版する」という意味以前に「公表する」という意味があります。弊誌マインドファースト通信を発行する(publish)こともpublicな仕事です。「パブリックコメント」とは,公的な機関が規則を制定したり,新しい政策を打ち出そうとしたりするときに,広く公に(=public),意見などを求める手続のことです。一般に,public(「市民,一般人」など),すなわち,共同体の構成員の一人としての言動を求められる領域では,私人としての立場は,おのずから狭くなると言うものでしょう。そもそも私たちの社会では,公(public)とは何かに関する理解が共有されていないようです。(H.)