2015心の健康オープンセミナー開催される

メンタルヘルスユーザーの快適空間~「私たちは,ここにいたい」と言える居場所づくり~

2015年11月28日(土)13:30~15:30高松市男女共同参画センターにおいて,マインドファースト主催の2015心の健康オープンセミナーが開催された。「メンタルヘルスユーザーの快適空間~『私たちはここにいたい』と言える居場所づくり~」と題して,NPO法人Csクリエーションおへんろの駅こくぶ(以下,「こくぶ」)の利用者の久保晶代さんと所長の中山末美さんを講師として迎えた。

はじめに,マインドファースト理事長島津昌代から挨拶があった。マインドファーストの紹介に続き,人は,生きている間に遭遇するストレス,人間関係や仕事の問題などで,過敏で脳が疲れやすくなったり,自己決定権が損なわれやすくなったりする。こうした健康問題とどのように付き合っていくかが課題になると述べた。コーディネーターは,マインドファースト花崎泉理事がつとめた。

冒頭に,中山さんから,NPO法人Csクリエーションの紹介があった。Csクリエーションは,かつての家族会コスモスが運営していた2つの作業所を譲り受け,作業所運営を軸に障害を持つ人たちが豊かな生活を送りことができる社会を地域の人々とともに作っていくことを目標に設立された。

Csクリエーションの名前の由来は,法人が目指す方向として,Community(地域社会),Citizen(市民),Change(変革),Challenge(挑戦)Collaboration(協働),Cooperation(協力)など,「C」を頭文字とする言葉を実際にCreation(創造)するという願いが込められている。

Csクリエーションが運営する「こくぶ」は,四国霊場88か所80番札所国分寺の門前にあり,障害者と地域の人々が協働で開いた接待所である。おへんろさんが気軽に立ち寄り次の目的地に向かう駅であると同時に,ある人にとっては新しい一歩を踏み出す駅であったり,またある人にとっては様々なことを経験して辿り着く駅であったり,色々な意味のある駅である。

活動内容は,おへんろさんへお茶やおしぼりや休憩所を提供するお接待活動,定食の提供,お弁当の宅配サービス,うどん接待・芸術祭・地域清掃などの地域交流,お花見・スポーツ・カラオケなどのQOL活動,相談活動などを行なっている。

続いて,久保さんのトークは,コーディネーターによるインタビュー形式ですすめられた。

まず,現状と課題について,料理作りのやりがい,接客を通した気づき,悩みを支え合うメンバー同士のわかちあい,自分の意見を言えるようになることでの表情の変化,おへんろさんやお客さんからの優しさを受けることによる勇気などがある。さらに,メンバー(利用者)同士で口論したり,怒ったり,笑ったりしながらさらなる居心地の良い空間をつくっていくこと,失敗から学ぶこと,スタッフとの対話をとおした認知の変化による情緒の改善など。

さらに,久保さんの体験発表に話が移り,母親との二人暮らしの中,重圧感のある母親には,ずっと自分の気持ちを言えなかった。そのため殻に閉じこもりがちだった。母にどうして分かってもらえないのか,喧嘩をしたこともある。しかし,自分が,病気をしたことで少し分かってもらえるようになった。最近は,母親に言いたいことも言えるし,話も聞いてもらえる。自分が「こくぶ」にいる間,家で一人の母のことが心配。それで,毎水曜日は,母に「こくぶ」へ来てもらい食事をしてもらっている。そのせいか,母も明るくなったし,自分も楽になった。

はじめは,メンバーの意見を聞くのが苦痛だった。それでイライラすることもあった。最近は,メンバーの方から,久保さんに相談があると言って声をかけてくれる。やはり,自分と同じ家族に関する相談が多い。ここ数年で久保さんの親子関係が大きく変化した印象を周りの者も感じている。

所長の中山さんは,メンバーにとっての「こくぶ」について語る。メンバーは,始業時刻の1時間ほど前にやってきて,それぞれが抱えている悩みなどを語りはじめる。「こくぶ」を通過点として次に向かう人と,「こくぶ」に居るのが良いと言う人がいる。地域の人,おへんろさん,ボランティアなど,いろんな人と触れ合いを通して働けるところに,「こくぶ」ならではの癒しがある。

「10年間で変わってきたこと,印象に残っていることは?」というコーディネーターの質問に久保さんは答える。「もともと声が大きい人が苦手。「こくぶ」へ来るようになった頃は,男性と話ができなかったが,やがて男の人とも冗談が言えるようになった。今では,近所の人とも話ができるようになったし,挨拶もできる。自分にはこんなこともできるんだと,自分をほめることもあるという。

最後に,運営面から見た居場所づくりについて,施設長の中山さんからの話があった。利用者にとって安心,安全であること。そのために,とりわけ調理という作業を通して,一人一人を支援してきた。「こくぶ」は,本来ゆっくり過ごせる場所であるのに,中には早く仕事に←




→取りかかりたがる人もいるが,何よりも仲間づくりを大切にしている。何事も一人で抱えないように,悩みとか体調を聞くことにしている。地域の人たちとの交流の中で緊張感が高まる場面もあるが,そうしたことも含めて,利用者は,ボランティアや地域の人たちとの関わりを通して,次第に視野が広がって行く。

セミナーへの参加者は,18名であったが,10を超える質問と意見交換があった。「メンバー同士で仲良くするために心がけていることは?」の質問に,久保さんは,「話をよく聞くことにつきる」と言い切る。

「利用者の相談を行なう上での中山さんのご苦労は?」との問いには,作業場面を離れて電話での相談も少なくない。しかし,いつでも電話に応じることができないが,夜8時ぐらいまでは受けている。こうした事情から,最近,「こくぶ」を誰でも気楽に相談できる場所にしたいという思いから「こくぶ相談室」を立ち上げたと語る。

終わりに,コーディネーターの花崎さんが,「久保さん,中山さんの話しぶりから,生き生きとした「こくぶ」の様子が良く伝わってきた」と締めくくった。

(文責:花岡正憲)

イベントウォッチ

2015男女共同参画
   市民フェスティバル 講演会

11月24日,サンポートホール高松大ホールで,2015男女共同参画市民フェスティバル 講演会が開催された。

これは,例年の高松市と高松市男女共同参画市民フェスティバル実行委員会主催事業に,今年度は,高松市男女共同参画センター開館20周年記念事業がジョイントして行われたものである。東京家政大学女性未来研究所所長の樋口恵子さんを講師に招いて,「人生100年時代-ひと・まち・未来を輝かそう-」と題し,1時間40分に及ぶ講演が行われた。

社会保障抑制の中で,介護における家族の負担と基礎自治体の負担をそれぞれ軽減するために,自己管理と地域の多様な人々の参加を提唱されたが,残念ながら,地域力を引き出すための行動指針や将来像は見えて来なかった。

後半は,古い家制度の中での女性が抑圧されてきた時代の回顧談や会場の笑いを誘った言い古された男性操縦法のくだりは,やや井戸端談議という印象をぬぐい得なかった。男性の立場としては,「人生100年時代-ひと・まち・未来を輝かそう-」と訴えたいのであれば,壇上から男性への呼びかけがあってもよかったと思っている。

当日,会場には女性だけでなく,若者も含め男性の姿が多く見られた。一方,定員1000名の大ホールを満たすために動員をかけられた市民団体もいると聞く。ジェンダーを越えたパートナーシップの実現には,動員をかけられて動く女性陣ではなく,老若男女を問わず,一人一人の判断でこの問題に向き合うために会場に足を運ぶ人たちの方が近いところにいる。もうそんな時代ではないかと言うのが正直な印象である。

特別講演のために遠方から著名人を呼び,1時間半から2時間近く講師の話を聞く。そして,聴衆との意見交換や質問の時間もなく,聴衆は沈黙を続け最後に拍手だけをして帰る。こうしたことに時間とお金を費やせるだけの余裕があるのかという疑問も感じすにはいられない。高度経済成長期以来,定番化したスタイルであるが,費用対効果と言う点でも見直しが必要な大型イベントであろう。

著名人の話に耳を傾けることの意義を否定するわけではないが,今日そうした場のあり方は大きく変わりつつある。肝心なことは5分もあれば伝えることができると言われる。TED Talkも5分からせいぜい20分だ。学会やシンポジウムでの講師の講演時間も一昔前のような長いものは少なくなり,意見交換や情報交換を大切にする方向にある。

節目の記念事業として行なうのなら,男女共同参画センター開設20年周年記念ではなく,過去20年の男女共同参画や女性の社会参加の分野の成果や課題を検証し合う機会にして欲しかった。男女共同参画の場は広がりつつあるが,各種の指数を見ても明らかなように,残された課題が少なくないことも事実だ。

(マインドファースト通信編集長 花岡正憲)

第132回理事会報告

日 時:2015年11月2日(月)19時00分~21時00分
場 所:高松市男女共同参画センター 第7会議室
事務連絡並びに報告に関する事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 ファミリーカウンセラーの認定に関する事項:先の認定面接で合否が保留になっていた被面接者については,議論の結果,認定とすることが承認された。また,今回の資格認定面接の申請にあたり,申請書類とは別にレポートを添付してきた応募者については,レポートは当人へ返却することが承認された。

第2号議案 フォークス21のブロシュールに関する事項:印刷原稿の校正が上がってきており,キャンセル料の説明文の前にキャンセル料のタイトルをつけることが承認された。

第3号議案 認定NPO認証取得記念シンポジウムに関する事項:基調講演は塚本千秋氏から受諾の回答があり,パネリスト候補の谷本氏は返事待ちの状況である。11月9日に認定NPO法人取得記念事業行委員会が開催予定であり,委員会で今後のスケジュールを立て,運営実務の役割分担を決めることを提案することが承認された。

第4号議案 心の健康オープンセミナーに関する事項:今回のオープンセミナーは,高松市男女共同参画市民フェスティバルにエントリーせず,独自事業として開催することが承認され,講師への依頼文を担当理事が持参すること,コーディネーターは花崎理事とすること,後日講師と打合わせを行うこと,次回のピアワークスで参加者を募り当日の受付を依頼すること,次回のファミリーカウンセラー会議で参加者の確認を行い,当日の役割分担を決めることが承認された。また,講師謝金は10,000円2人分,受付簿,領収書の準備は事務局が行うこととした。

第5号議案 ボランティア役務の評価に関する事項:ボランティア役務にあたる科目に相談事業経費,詫間相談室の家賃が挙げられているが,経理上の処理をどのようにするのか,引き続き情報収集することが承認された。

第6号議案 マインドファーストの登録商標に関する事項:登録商標に関して引き続き情報収集することが承認された。

第7号議案 事業の広告に関する事項:タウンページに本町の電話番号を掲載するという案は,本町の電話はピアサポートラインの専用電話であり,また常に使用していないこともあり,むずかしいという結論となった。さらに情報収集することが承認された。

第8号議案 家族精神保健相談員資格制度施行細則に関する事項:審議未了

第9号議案 ストレスチェックの義務化を受けた新規事業に関する事項:審議未了

第10号議案 寄付金の依頼に関する事項:審議未了で次回の理事会には第1号議案とし,早急に審議することが承認された。

第11号議案 ビジョンの作成に関する事項:審議未了

編集後記:「話をよく聞くことにつきる」心の健康オープンセミナーでの久保晶代さんの言葉です。家族,学校,職場などのあり方が問われています。私たちにとって身近なはずのところが,聞いてもらえない場所になっている。だから,居場所がなくなって行く。何よりも自分が人の話を聞けなくなっている,まず,これに気がつくことが居場所づくりの第一歩なのでしょう。(H)