平成26年度
「自殺予防に向けたメンタルヘルス向上に関する研究プロジェクト」 交流集会 参加報告
マインドファースト認定ファミリーカウンセラー
花崎 泉
平成27年3月14日に高松市民防災センターにおいて,香川大学メンタルヘルス向上に関するプロジェクトの交流会(香川大学危機管理研究センター主催)
が行われた。このプロジェクトは香川県における自殺予防への取組みの継続発展に寄与することを目指して,平成22年度から香川県民のメンタルヘルスに関わる実態を調査し,自殺予防に携わる人材の質,量を向上させるため,各養成講座・カリキュラム作成・教材開発等を行ってきた。
今回は,メンプロリーダー養成講座修了者を対象に(主に民生委員,保健委員の方々)地域での活動に必要な「つなぐ」をテーマに関係機関や団体と交流を深めることにより,自殺予防の初期対応を,より多くの県民の皆様とともに,地域で維持していけるように考えていきたいという内容。
まず,香川大学医学部公衆衛生学の平尾智広教授からご挨拶と研究報告がなされた。自殺の危機経路は,うつ病・生活苦・家族の不和・いじめ・過労・職場の人間関係・その他,たくさん存在する問題から自殺へと向かうことがライフリンクの調査でわかった。どこにでもある悩みで,「何とかなるのではないか?」ということから,この活動に携わっている。
地域コミュニティーにおいてリーダー(核)になって頂く方を勉強しながら育てていく。つまりは,悩んでいる人に気づき,声をかけ,話を聞いて,必要な支援につなげることを皆でやっていくことが,メンプロ活動である。メンプロリーダーは,自治会,生涯学習,保健・福祉などの場で講習会を開催す
るにあたり,協働,調整する役割が必要となるが,それは重要なスキルで自殺予防へとつながる。と,お話があった。
その後,関係機関や団体の活動報告がなされた。高松市保健センターからは,自殺対策推進事業や心の健康セミナーの開催について。こころの健康相談においては,相談件数が増加傾向にあることが話された。高松市地域包括支援センターは,高齢者の包括ケアについて,高齢者の相談に応じていることが語られた。香川県精神保健福祉センターからは,自殺者は交通事故の4倍で,若い人の亡くなった理由の1番に自殺があげられることが話された。ゲートキーパー養成事業,自殺企図者に対する訪問支援事業など行っていて,アルコールや薬物のアディクションで亡くなるケースが多いことや自殺企図者からは,助けられたということで良かったということが多いことが語られた。香川県警察本部生活安全部では,警察は個人の生命と身体の保護の責務があり,警察安全相談の業務では自殺予防も行っていて,お話の元を十分聞いて場所を調べて止めることもあると話された。当団体の活動報告においては,クライシスサポートカウンセリングやサバイビングの活動などを紹介させて頂いた。
その後,メインテーマでもある全体討議「つなぐ」についての質疑応答がなされた。自殺をほのめかしている方と保健師をつないだ例では,保健師が精神科受診に同行した話や,妄想のある方の例では,その方の家族を探して対応したことで落ち着いたという話,また,友人の自殺を対応できなかった話など,いろいろな角度からの話がなされた。
警察からは「子供さんの悩みを受けることはあるか?」との質問があり,子供の希死のメールの情報が少なくないとのことだったが,全体からは圧倒的に高齢者の相談が多いとのことだった。←




→精神保健福祉センターからは,通報を受けて,強制的に連れて行かれた方は心の傷になるので,通報ではなく,保健所で対応してもらえればとのこと。
まとめとして平尾教授からは,社会問題などの積み重ねで根本をたどっていくと,貧困・職業を失うという背景がある。ソ連が崩壊したときに自殺者が急増した。話を聴くこと,自他の違いを知ることは,汎用性のある地域にとって大事な活動である。組織の壁を低くしてつなぐために,気付けなかった,声掛けておけばよかった,と悩んだらやりましょう。一人でダメなら二人,と締めくくられた。
◆その程度の資格制度で良いのか◆
   -精神保健指定医資格の不正取得-
聖マリアンナ医科大学病院の複数の医師が,精神保健指定医の資格を不正に取得したとして,厚生労働省は4月15日,資格を不正に取得した医師11名とその指導に当たっていた医師9名,あわせて20名の指定医の資格を取り消した。精神保健指定医資格の取得には,3年以上の実務経験に加え,指導医のもとで統合失調症や児童思春期など,自分が診断や治療に関わったケースレポートを8例以上提出することが求められることになっている。今回は,自分が関わっていない患者をケースレポートとして提出していたという。
精神保健指定医制度は,精神医療現場において,人権侵害事案があいつぐ中で,1988年の精神保健法改正で規定されたものである。措置鑑定のほか措置解除,医療保護入院,応急入院の適応判定,身体的拘束及び12時間を超える隔離といった行動制限の適応判定等,指定医の資格を持たない医師には許されない判断を行い,一部の業務はみなし公務員として行うものとされる。
憲法第13条には,「すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする」とある。強制医療は,一時的にせよ人身の自由を直接制約するわけであるから,その判断は,本来は,法律に精通した者によって,厳格になされなければならない。
指定医制度の導入を巡っては,当初から自由の制限に関わる判断を医療現場に任せるのは,医師の負担が大きすぎるのではないかという議論があった。そうした一方で,指定医制度発足後間もなく,資格取得に必要なケースを確保することが難しいことを理由に,ケースレポートの要件緩和を求める声が精神医療現場から上がっていた。重たい責任が求められる指定医制度を軽視する風潮は早くから見られた。
わが国の指定医制度は,司法権限を医師に与えているという点において,医師や医療現場の事情を優先したものになっている。強制入院の決定に疑義や不満がある場合は,当人及び関係者のアピール権が保障されているものの,事後の手続きになるため,その権利を行使する上で不利益や制約が大きくなる。
今回のことは,精神保健福祉法の改正が行われるたびに,強制入院の手続きを簡略化する流れの中で,起こるべくして起きたとも言える。指定医資格取得の手続きが,杜撰になっていることは,強制医療の判断そのものが,恣意的で粗雑になっていることの反映ではないかと見られても仕方なかろう。
「精神科医療においては,患者に入院を強制したり,身体的拘束を含む行動制限が行われたりする場面がある」と当然のことのよう
に言われるが,そもそも,こうした不寛容な差別的表現は,精神障害者に対する偏見を増長しかねない。病気のせいで判断力や同意能力が損なわれることはあっても,一時的なことであることが殆どである。危機対応やいわゆるソフトサイカイアトリー(軟らかい精神医学)の遅れが,不必要な強制医療を生んでしまうことは否定できない。病気の重症度に関わらず,住み慣れた地域で医療を受ける権利を保障することが基本であろう。
2016年4月から障害者差別解消法が施行される。指定医制度は,先の憲法13条の「生命・自由・幸福追求権」をはじめ,第31条「適正手続きの保障」や第34条「抑留・拘禁に対する保障」などにも関わることである。そうした資格が,不正に取得できてしまう。果たして,その程度の資格制度で良いものなのか。強制医療のあり方が問いなおされるのは時間の問題であろう。
(マインドファースト通信編集長 花岡正憲)
第122回理事会報告
日 時:2015年4月13日(月)19時00分~21時00分
場 所:高松市男女共同参画センター 第7会議室
事務連絡並びに報告に関する事項:省略
議事の経過の概要及び議決の結果
第1号議案 2015年度地域自殺対策強化事業(新事業)に関する事項:県の担当者より,4月15日までに計画書提出の依頼のメールがあった。CSCは柾理事,ピアワークス,ピアサポートラインは藤澤理事,トレーニング(スーパービジョンも含める),おどりばは三好理事,ファミリーカウンセラー養成講座とファクトシートは島津理事,サバイビングは北條理事がそれぞれの計画書を昨年度の計画書を参考に作成し,明日中にメーリングで流し,事務局がまとめて提出することが承認された。
第2号議案 2015年度予算案に関する事項:県の自殺対策強化事業の動向によって,予算が大幅に変更することが予測されるため,4月中は予算案の決定を待ち,決定後に2015年度の予算案を作成することが承認された。
第3号議案 2015年度事業計画,相談料の減免措置に関する事項:若者のメンタルヘルス家族相談の減免措置として,初回4,000円それ以降2回,3回目までは3,000円とすること,フォークス21のブロシュールに減免について明記したものを作成することが承認された。
第4号議案 相談事業および活動の広報に関する事項,第6号議案 活動費規定に関する事項,第7号議案 家族精神保健相談員資格制度施行細則に関する事項,第8号議案 2015年度役員改正に関する事項及び第9号議案 調査研究事業「子どもの喪失体験について」に関する事項:いずれも審議未了
第5号議案 香川県共同募金会の助成事業に関する事項:ピアの人たちが居場所作りで申請をしたいとの申し出があり,花崎さんを中心に事業計画を練り,4月27日のファミリーカウンセラー会議の議題とすることが承認された。
編集後記:◆法律は,人は間違いを犯しやすいため,人の行動を予測しやすくするためのものだと言われます。その法律を作るのも人ですから,法律はいつも正しいとは言えず,間違いを犯すこともあります。法律はできたときから古くなると言われるのは,法律の制定過程で誤謬が含まれてしまうからに他なりません。「わが国は,法治国家なので法に基づき粛々と・・・」とは行かないわけは,こうしたところにもあります。◆統一地方選挙が終わりました。有権者,被選挙人ともに選挙に対する無関心は,民主主義の危機というよりも,今の地方議会への失望があるからでしょう。「地域のことを解決するには,もっと別の方法があるのではないか」 うすうすそう感じ始めている人,真剣に考えている人,そんな人が増えてきていると見ることもできるのではないでしょうか。(H)