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1月9日,第4回「心の健康オープンセミナー」が開催されました。今回は,糖尿病専門医の冨岡幸生さんが,「生活習慣病とメンタルヘルス」と題して話をされました。以下はその要約です。
生活習慣病とは,良くない生活習慣によって引き起こされる病気の総称で,今日,日本人の死亡者数の3分の2を占めている。癌もこのうちに含まれる。近年,日本人の生活パターンが大きく変化したことが原因として考えられる。生活習慣とは,食事(量・内容),運動,喫煙,アルコール摂取などで,その予防には,運動習慣の徹底,食生活の改善,禁煙などが大切である。そうした中で今日問題になっているメタボリックシンドロームは,内臓脂肪症候群とも呼ばれ,一言でいえば,腹囲が太め,血圧が少し高め,血糖が少し高め,中性脂肪が少し高めの場合がこれに該当する。
特に肥満と関係のあるホルモンで注目されるのは,グレリンとレプチンである。グレリンは胃から産生され,下垂体に働き成長ホルモンの分泌を促し,視床下部に働いて食欲を増進させる。グレリンを投与すると,体重増加,脂肪組織の増大がみられる。一方,レプチンはエネルギー代謝を亢進させ,体重を適正に保つとされる。肥満になると,脂肪組織から分泌されるレプチンが増える。血液中のレプチンが増えると,間脳視床下部(摂食中枢)に作用して満腹感を感じさせ食欲が落ちる。また,交感神経系にも働きかけ,脂肪の蓄積を抑制し,エネルギー消費を亢進させる。
このようなことから,レプチンは抗肥満ホルモンとも呼ばれ,グレリンに拮抗するホルモンであると考えられている。しかし,ヒトでは飢餓に対応するため,もともと食欲亢進メカニズムの方が優位になっている。したがって,ホルモンの観点から肥満のメカニズムをみると,本来ヒトが生きてゆくために必要とし身につけたものが害になっているとも言える。肥満者ではレプチン濃度が高値でも,レプチン抵抗性があり,肥満抑制機能が作用していない状態である。
ストレスによって血液中の副腎皮質ホルモンが増えると,食欲が亢進するだけでなく睡眠障害からうつになることがあるが,脂肪細胞内の副腎皮質ホルモンが増えても,食欲が亢進し肥満をきたす。また,慢性のストレスはある種の神経伝達物質の分泌を高め,脂肪細胞を肥満させる。肥満とは脂肪細胞が太ってくることである。
このように,一般に,食欲のコントロールには様々なホルモンや神経伝達物質が関係しており,ストレスによってそれらのバランスや機能が乱されると,過食の状態を引き起こしてしまう。したがって,慢性的なストレスは食欲を増進させ,肥満を招くとも言える。ダイエットをしようとしてもなかなかうまくいかない理由の一つに,このストレスと食欲との関係がある。
生活習慣病は,免疫機構という点からは,自己と非自己(他者及び外界)の関係における心身の自己防御システムの乱れとも言える。 |
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例えば,食行為という生活習慣一つをとってみても,咀嚼することで,交感神経を介したアドレナリン(副腎髄質ホルモン)が低下し,過緊張を防ぐことができる。しかし,今日は,食事をゆっくり噛んで楽しみながら食べることができないだけでなく,運動する時間も余裕もなければ,ゆっくり睡眠をとる余裕もなく,短期間で多くの結果を出すという要求をされ続ける時代である。これらは全て,心の余裕をなくす原因になっているだけでなく,生活習慣病の原因にもなる。メンタルヘルスは,心の健康だけでなく,生活習慣病の予防や治療効果にも大きな影響がある。(M.H.) |
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プログラム
開 催 日 |
テ ー マ |
講 師 |
2007年
7月11日(水) |
思春期のメンタルヘルスについて |
高松赤十字病院カウンセラー
島津 昌代 |
9月12日(水) |
やさしい統合失調症の話 |
精神科医
花岡 正憲 |
11月14日(水) |
精神病の早期発見と回復のために |
保健師
中村 照江 |
2008年
1月 9日(水) |
生活習慣病とメンタルヘルス |
糖尿病専門医
冨岡 幸生 |
3月12日(水) |
心の病と社会参加 |
保健師
中添 和代 |
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場 所:高松市男女共同参画センター |
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日 時:奇数月第2水曜日18時30分〜20時30分 |
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事前申込は必要でありませんが参加費として500円が必要 |
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編集後記:慢性的なストレスを下げ,生活習慣病に陥ることを防ぐには,ストレスマネジメントの観点から,自分にとってストレスとなっているものを認識し,生活環境を見直すことが大切と言えそうです。(H) |
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