認定NPO法人マインドファースト

No.249 2026年2月号
 マインドファースト通信


技術援助・講師派遣

香川県消防学校ゲートキーパー養成研修事業

マインドファースト理事 花岡正憲 上田ひとみ

2026年2月25日(水),香川県消防学校救急科の生徒約30名を対象にゲートキーパー普及啓発事業が行われ,マインドファーストから,花岡と上田を講師として派遣されました。 

はじめに,主催者の香川県精神保健福祉センターの酒井悠佑氏から,香川県の自殺の状況について解説があり,引き続き,マインドファーストからは花岡が,スライドショーとマインドファースト監修のファクトシートを用いて,「自殺予防の基礎を学ぶ~自殺予防のために私たちができること~」と題して講義を行いました。

講義では,「自殺とはなにか」「ゲートキーパーの役割」「自殺に関する10の神話」「自殺の危険因子と防御因子」「気づきのポイント~だれかが自殺をしたがっているのは,どうすればわかるか?~」「わたしは,なにができるのか?」「自殺が起きてしまったら」「自殺を考えている人の心理」「子ども・若者の自殺を防ぐ~家族と友人ができること~」「自傷行為とは何か?」などについて解説を行ないました。

講義の後は演習の時間を設け,上田が担当しました。演習では,5つのグループに分かれ,救急場面で遭遇する可能性が高い自殺企図の仮想事例を用いて,グループディスカッションとロールプレイを行いました。救急事例は,現場に赴いた救急隊員が,切迫した時間の中で,搬送の判断を求められますが,特にメンタルヘルス事例については,搬送先の選定や搬送の可否判断だけでなく,臨場場面においてゲートキーパーとしての対応が求められることが少なくありません。こうしたことから,演習では,仮想事例について,まず「あなた自身は何ができそうですか」という視点でディスカッションを行なった後,ロールプレイを行いました。自殺未遂現場では,当人とその家族や関係者への生活者的視点でのインターベンション(介入)が求められます。ロールプレイは,自殺未遂関連への出動要請という仮想現実の中での実践活動を通してゲートキーパーとしてのスキルを高めておくこという狙いがありました。ロールプレイの後,グループごとの発表を行いましたが,こうした現場での対応の複雑さも含め,気づきを深めることができたという印象を持ちました。



報告

令和7年度精神保健福祉ネットワーク事業  ~自殺未遂者支援関係機関ネットワーク会議~

マインドファースト理事長 島津昌代

令和8年2月19日,高松市保健センター5階研修室において,令和7年度精神保健福祉ネットワーク事業~自殺未遂者関係機関ネットワーク会議~が開催された。出席者は香川県下の行政・消防・警察・民間団体より13名と高松市健康づくり推進課職員8名であった。

高松市健康づくり推進課谷本課長の挨拶の後,同課杉山氏及び中村氏より高松市の自殺の現状・健康づくり推進課の自殺対策についての説明があった。高松市における自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は,平成23年をピークに低下傾向にあったが,令和元年以降増加に転じ,令和5年には中核市62市のうち最も高く22.1となっていた。令和6年は17.1で,地域の主な自殺者の特徴(地域自殺実態プロファイル2025)によると,女性40~59歳無職同居と男性20~39歳有職同居の数が昨年より増えているとのことであった。

次に,愛媛大学大学院精神神経科学講座准教授 伊賀淳一氏による,「新しいうつ病診療ガイドラインにおける自殺対策」の講演が行われた。このガイドラインは日本うつ病学会により昨年改定され,自殺リスク評価の継続性,治療初期・変更時の慎重なモニタリング,安全確保と多職種・地域連携を柱として年齢・重症度に応じた実践的対応が明確にしめされているとのことであった。

最後に事例検討を通して,各団体に対して,どのような対応や支援が可能であるか?支援活動を行う上で他団体とどのような機関,団体と連携が可能か?などの意見交換が小グループ毎に行われた。グループの構成は高松市消防局,警察,高松市生活福祉課と立場が異なる人達であったので,それぞれの立場の現状と苦労する点と共に,守秘義務を守りつつも,どこが何を分担するか関係機関の連携の必要性も話し合われた。また,伊賀准教授より,事例に即した受診へのつなぎ方のアドバイスがあり,関係者が無力感に襲われることなく,それぞれにできることがあるとエンパワーされる会議であった。


第269回理事会報告

日 時:2026年2月2日(月)19時00分~20時30分

場 所:高松市本町9-3白井ビル403 オフィス本町

事務連絡および周知事項,報告事項:省略

議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 NPO取得20周年・認定NPO取得10周年記念イベントに関すること

①イベントの趣旨と方向性として,マインドファーストのNPO設立20周年および認定取得10周年を記念し,2026年度(令和8年度)末の開催,オープンダイアローグや家族療法をその方向性として考える事が確認された。単なる著名人の招聘に留まらず,マインドファーストのミッションを体現する内容とすることや,核となるキーワードとして,「対話」と「共生」が挙げられ,地域に根ざした活動の意義と,これからの展望などについて話し合われた。
 ②テーマとして,NPO取得10周年時のセミナーのテーマである「結論を急がない対話と豊かさ」をベースにしつつ,サブテーマに「共生」「対話」を盛り込むことが話し合われた。また,日本家族療法学会の2025年度テーマは,「温故知新」であった。オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)の2025年イベントのテーマも「オープンダイアローグと人権に基づいたアプローチ」であった。WHO地域精神保健ガイダンス(人権基準)は,「本人中心の権利と障害のある人の権利に関する条約(障害者権利条約)国際的な人権基準に沿った地域保健のシステムの提供を促進する。」とされている。マインドファーストが行ってきた過去20年における各事業は,家族療法学会やODNJPのテーマと目指すところは重なるところがあり,これらのテーマとの連動の案も出された。花岡理事より,マインドファーストの原点が「古い精神医療への異議申立」にあり,イタリアの精神医療改革やフィンランドのオープンダイアローグに倣い,対話を通じて人権や共生を実現することにあると述べられ,DEI(多様性・公平性・包摂性)が,これからの社会に必要な要素であり,対話を通じたエンパワーメントと行動の重要性が強調された。
 ③形式としては,基調講演(約90分)およびシンポジウムの2部構成(計約3時間)が提案された。マインドファーストの20年の歩みを振り返り,団体の活動の原点や事業についての説明の場を望む意見も出された。
 ④講師候補として,以下の候補者が挙げられた。
 ・斎藤環氏:オープンダイアローグを広めた第一人者で自身の診療所でオープンダイアローグを実践。
 ・遊佐安一郎氏:家族療法の専門家。「家族療法入門―システムズ・アプローチの理論と実際」の著者。
 ・東豊氏:龍谷大学文学部臨床心理学科教授。システムズ・アプローチの専門家。「漫画でわかる家族療法」の著者。
 ・矢原隆行氏:熊本大学大学院助教授。リフレクティング・アプローチを刑務所などで実践している。
 ・森川すいめい氏:精神科医。オープンダイアローグ・トレーナー。
 ・星野概念氏:精神科医。ミュージシャン。
 ⑤会場としては,サンポートホール高松 54会議室(定員100〜120名)を第一候補とする。予算としては,共同募金の「テーマ募金」を原資とし,参加費(過去実績1,000円程度)も検討する。
 ⑥20周年記念として,過去の通信に掲載されたコラムを1冊にまとめる案が提案された。
 ⑦各理事が,テーマとなるキーワードやタイトル案を次回までに検討することとなった。

第2号議案 実行委員会に関すること

これまでは理事会のメンバーとファミリーカウンセラーとがほぼ同じであるため実行委員会も理事会が担っていたが,現在はファミリーカウンセラーの人数が増え,熱心に活動に関わっている方も多いため,理事以外のファミリーカウンセラーにも実行委員として加わってもらうよう呼びかける方針である。具体的な呼びかけは,今月のファミリーカウンセラー会議(2/22)で行う予定である。ただし,イベントの大きな方向性やテーマが決まっていない段階では,呼びかけにくいため,まずは理事会である程度の企画案を固めてから正式に募ることとする。現在行われている会議はまだ前段階の「理事会」という扱いだが,ファミリーカウンセラーからメンバーを募った後は,正式に「実行委員会」という名称を使用して進めていく予定である。以上,島津理事長から説明があり,了承された。イベントに特化した次回の会議(実質的な実行委員会予備会議)は,3月4日(水)19時からハイブリッドで開催される予定。

第270回理事会報告

日 時:2月9日(月)19時00分~21時10分

場 所:高松市本町9-3白井ビル403 オフィス本町

事務連絡および周知事項,報告事項:省略

議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 会計に関すること

青木副理事長から,預貯金通帳・現金出納の出入金について説明があり了承された。先月,花岡理事より指摘のあった,10月・11月の「心の健康づくり出前事業(善通寺市支援学校10/24,麻小学校11/26)」の講師料・旅費に関して,1/21の入金の報告がなされた。

第2号議案 共同募金テーマ募金に関すること

1/26までで,寄付22件,合計279,742円の寄付を受領,2/2付で4名分(38,000円)の追加が確認された。ネット募金(1万円)の連絡も届いているが,決済完了後に計上予定。引き続き広報と協力呼びかけを継続することで了承された。

第3号議案 心の健康オープンセミナーに関すること

2/22の開催に向け準備は順調であり,現在の申し込みは17名であると,担当の青木理事より報告があった。チラシのメール便が届いていない会員がいると上田理事より報告があった。送料のコスト増を受け,会員への広報は「メーリングリストでのデータ送付」を基本とする案が出た。 会員へはPDFデータで送り,紙媒体が必要な者や,自身で配布に協力してくれる者に対してのみ,会議等での手渡しや個別送付を行う案も出た。次年度以降の発送名簿を整理し,デジタルとアナログを使い分ける効率的な運用を目指すことで了承された。

第4号議案 おどりばに関すること

岩﨑理事より,現状の報告があった。複数の参加者へのスタッフの関わり方について,青木理事より花岡理事によるスーパービジョンの希望があり,岩﨑理事と共に,次回3/7の開催日までに日程調整して実施することで了承された。

第5号議案 リトリートたくまに関すること

第2回コンサルテーションは,2/23 13:00~オフィス本町とZOOMのハイブリッド形式で開催されることが,上田理事より報告があった。続けて,居場所づくり企画運営委員については,現在4名(岩崎・花岡・植松・上田)であることが報告された。構成員6〜8名に達するまで募集を継続し,2/22のファミリーカウンセラー会議で再度募集することで了承された。

第6号議案 傾聴・相談力セミナーに関すること

上田理事より,現在ホームページを見て参加された方など会員外(男性,学校関係者ら)の参加も含め,全体の人数としては15名程度参加者がいることが報告された。2026年度の予算案は,3回の「傾聴・相談力養成講座」の実施案を含め,251,100円の提示がなされた。この養成講座は,基礎コースもしくは,アドバンスコースとしてファミリーカウンセラー養成講座(6回)の前後いずれかに連動させて開催する予定。次回の理事会でさらに詳細を検討することで了承された。

第7号議案 ブロシュール等発送に関すること

メーリングリストで発送先リストを共有し,2/21までに各自チェックを行う。傾聴・相談力セミナーとHOPEのブロシュール発送については,高松市内の幼稚園・保育所・子ども園約100箇所のうち「地域子育て支援拠点(センター)」になっている場所に絞って配布先を検討し,次年度の送付を検討することで了承された。継続審議。

第8号議案 オフィス本町のZOOM環境に関すること

事務局専用PCをホストとして運用。また,各理事が自身のPCでも,ホストとしてZOOM運用できるよう,プロプランのID・パスワードを共有し,マニュアルを整備することで了承された。

第9号議案 NPO取得20周年・認定NPO取得10周年記念イベントに関することに関すること

上田理事より講師候補として,安田菜津紀氏(フォトジャーナリスト)の紹介がなされた。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)の副代表であり,自身の家族の喪失経験やマイノリティ問題を通じた「共生」の視点が,NPOの理念と重なる。安田氏が副代表を務める「Dialogue for People」と,主催団体(マインドファースト)が,それぞれの立場から「対話」や「共生」について語り合うNPO同士のコラボレーションの企画案も出された。斎藤環氏(精神科医)は,オープンダイアローグの第一人者である。家族関係の修復や引きこもり支援に直結する斎藤氏の持ち味を最大限に引き出し,参加者が深い体感を得るためには,人数を30名程度に絞ったワークショップ形式が最適であり,20周年記念イベントの一部としてではなく,マインドファーストの独立した事業として,参加費をしっかりと設定した上で「オープンダイアログ・セミナー」として開催する案も出された。両者に共通しているのは,「対話を通じて多様性を認め合う」という点であるが,斎藤氏はそれを「家族や支援のミクロな次元」で,安田氏は「社会的な広がりのあるマクロな次元」で捉えているという違いがある。また,地元で活動する人々をシンポジストに含め,身近なところでの生きづらさや家族の問題について話し合う場にしたいという意向や,両氏の対談という案も出たが,予算や講師の負担,シンポジウムの目指すべき効果を考慮し,3/4に本件に特化した臨時理事会を開催して検討していくことで了承された。

第10号議案 2026年度の事業計画に関すること

既存事業に加え,前述の「傾聴相談力養成講座」と「20周年記念イベント」を大きな柱として盛り込む。「心の健康オープンセミナー」は保留。総会に向け,全体のバランスを検討することで了承された。継続審議。

編集後記: 毎年2月,3月は,確定申告のシーズンで,多くの国民が,収支決算書をはじめ申告書類の作成に追われます。また,企業やその他の法人にとっては,年度末を控え収支決算報告と事業報告の作成にとりかかる時期です。私たち認定NPOマインドファーストもその例外ではありません◆NPOの活動の原資は,一般からの寄付や民間及び公的助成金からなり,支出金額だけでなく支出目的やその根拠などについて,説明責任を求められます。非営利活動法人であるため,一般企業のように,収益が出たからと言って,役員や社員で利益の一部を分配するということは認められていません◆これは認定NPOだけでなく,他の公益法人も同様です。寄付者に対して税制優遇措置が設けられているのも,公益性が高い地域の社会課題に取り組む団体として認定されているからです。資金は,本来の事業目的のために使うという公金意識が欠かせず,切手一円,封筒一枚にしても私的目的で使うことはできません◆まして,日ごろから寄付や助成金をいただいている関係者や関係諸団体に,当法人の役員名でカタログギフトを送るなどと言うことは,100%ありえません。飲食,贈答などは会計監査で不適切な支出行為として修正・返金を求められるだけでなく,役員の責任が問われ,団体としての認定が取り消される事態にもなりかねません◆この点では,政治団体や政党支部も同じです。2月25日,高市早苗首相が,自身が支部長を務める自民党奈良県第2選挙区支部の政治資金から,先の衆院選で当選した自民党全議員315人に,当選祝い名目で約3万円相当のカタログギフトを配布していたことが分かり,問題になっています◆政治団体への寄付にも,個人が行う場合に「所得控除」または「税額控除」のいずれかを選択できる税制優遇措置があります。カタログギフト代に政党助成金は使っていないと言ったところで,奈良県支部のおカネは,本来の政治活動に使うものです。「贈答」にしろ「接待」にしろ,こうした支出項目があるとすれば大きな問題です◆政治団体の会計は,公益法人,認定NPOなどと同様,団体関係者や特定の利害関係人への「利益分配」は認められず,「非営利目的」であるべきです。利益分配するほどの余裕があるなら,寄付者に返金すべきでしょう◆政治家は,こうした贈答品を受け取る行為について抑制的であるべきです。米国では政治家(議員と職員)がプレゼントを受け取る際のルールと報告義務は,倫理規定や政府倫理法によって厳格に定められています。ドイツでも政治家(連邦議会議員や政府閣僚)がプレゼントを受け取る際は,職務の独立性を保つために厳格な報告と制限ルールが設けられています◆日本は「贈答文化」があるからという釈明は通用しません。選挙運動員には原則として報酬を支給できないのに,当選者には当選祝いのギフト。政治家の特権意識は,税金や寄付金からなる政治資金に対する公金意識を希薄にさせているようです◆終わりに,何十年も前になる公私混同に関わるエピソードを紹介しておきましょう。外国の研究機関へ研究者として派遣された人の体験談です。研究所で日本の家族宛て書いた手紙を封書に入れ秘書に渡したところ,「あなたの家族宛てですね」と確認をとられ,「それなら切手を貼ってください」と言われました。そして,秘書は封書の発信欄にも目を移し,研究機関の名前が印刷されていたことに気づいて,「研究所の封筒を私用に使うのは禁止されています」と受け取りを拒否されたとのことです◆日本人的感覚では,封筒一枚ぐらい良いだろうとなりやすいところですが,問われたのは公金意識です。このことは上司へ報告され,私的流用が懸念される研究者として,その後の研究生活に影を落とすことになった,と自戒を込めて述べていたのが印象に残っています。(H.)


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