認定NPO法人マインドファースト

No.242 2025年7月号
 マインドファースト通信

【技術援助】坂出市立坂出小学校 2025年度「こころの健康づくり出前授業」

マインドファースト理事 花岡正憲

2025年7月24日,坂出市立坂出小学校において,教員30名を対象にこころの健康づくり出前事業を行いました。講師は花岡が務めました。

あらかじめ派遣先から示された二つの希望テーマ「ゲートキーパーについて」と「悩んでいる子どもへのかかわり方」に沿って講義を行いました。

テーマ1「ゲートキーパーについて」は,マインドファースト作成のファクトシート「自殺に関する神話10の間違い」と「自殺を考えている人とその家族や友人のために」を使用して,ゲートキーパーに求められる基本的なことについて解説を行いました。解説の後,「自殺を考えている人に対してはできるだけポジティブな言葉を返したいと思うが,こうした対応に疑問を感じることもある」との趣旨の質問がありました。これについては,「一見否定的であったり,曖昧であったりする当人の語りについては,リフレーミングという視点で,ポジティブないし中立的な文脈で表現しなおしてみることが有効なことがあるが,これには少しトレーニングが必要である。基本的には,希望や救いがない感情を表現させることは避け,自殺や当人が困っている問題について,オープンな対話を重ねることが大切である」と説明しました。

後半のテーマ2「悩んでいる子どもへのかかわり方」では,就学前から保育現場で発達障害(自閉症スペクトラム障害)を疑われている事例(仮想事例)を提示し,就学後の支援のあり方について意見交換の後,こうした事例の学校現場における視点と支援のあり方について,ファクトシート「子どもの発達が気になる方に」と「子どもと親の愛着関係~愛着障害からの回復のために」を用いて解説を行いました。幼少時に発達障害と診断がつく中核的な発達障害児に対しては療育という観点から支援が必要になるが,そうではない就学前に子どもの気になる言動から発達障害を疑われるグレーゾーンの子どもが増えている。こうした子どもについては,発達障害ではなく,愛着形成過程における問題があることを念頭に置いて支援を行うことが求められる。そのためには,支援に必要な生活歴に関する情報を収集しておくことが必要である。子どもの認知機能と社会性を育む上で愛着基盤が大切であること,そして,愛着形成過程が不安定になりがちな子どもに対しては,「対象恒常性」の向上を図るために,子どもがストレスを感じているときに,安全感を持てる大人や教師の向き合い方が鍵になることを強調しておきました。最後に,マインドファーストの相談事業の一つである子どもの喪失体験の支援「HOPE(ホープ)」を紹介して研修を締めくくりました。


【報告】第6回三豊市自殺予防対策協議会

マインドファースト副理事長 青木節子

2025年7月7日,みとよ未来創造館A・B会議室において,第6回三豊市自殺予防対策協議会が開催された。出席者は三豊市関係機関,三豊市職員合わせて26名であった。

はじめに三豊市健康福祉課の内田課長より挨拶,その後,山口会長(四国学院大学)より挨拶があった。役員の約半数が交替したため,改めて,各委員から自己紹介が行われた。

次に,三豊市福祉課の関氏より,三豊市の自殺の現状について説明がなされた。令和2年~令和6年の学生生徒等の自殺者は3人で,全国的にも子ども・若者の自殺者数は増加傾向にあり,対策が重要課題である。自殺の原因と背景としては, 健康問題が最も多い原因だが,様々な要因が連鎖するため,多角的な支援が必要であり,各機関同士の連携が不可欠と説明がなされた。三豊市の主な自殺者の特徴としては,高齢者と働く世代の自殺者が多く,対策強化の必要性が示されていた。

次に,三豊市自殺対策計画第2期について,資料に基づき,山中氏より,三豊市としては,心の相談リーフレットの内容・設置場所を見直し,働き世代への自殺対策として合同就職面接会で企業の人事担当者にも配布を予定,又,市民向けのゲートキーパー養成講座や,メンタルヘルス・グリーフワークの市民講座を開催予定である事が説明された。

引き続き,各所属機関での取り組みについて,各機関より発言があった。

  • 三豊総合病院:精神科医が常勤ではないため,看護師が対応。気になる患者にはチームで対応し,必要な情報提供を行う。精神保健福祉センターとの連携は,身体的治療後,他病院へ転院することが多いため,継続的な支援が難しい場合がある。
  • 香川県西讃保健所:月2回精神科医による健康相談(予約制)や保健師による電話相談を実施。依存症やアルコール依存症の相談が多い。精神障害のある方の自傷疑いには緊急対応を行う。
  • 県精神保健福祉センター:ゲートキーパーの啓発事業(養成研修への講師派遣,キャラクター「キーモン」活用),自殺未遂者への訪問支援事業,自殺予防のための対応力向上研修会,心の健康相談(平日9時~16時30分まで電話相談を実施。自殺対策週間や強化月間には21時まで延長対応)を行っている。
  • 認定NPO法人グリーフワークかがわ:喪失体験者に対し,心の危機的状況に陥ることなく次の一歩を踏み出せるよう支援する団体。特に,大切な人を亡くした方が孤独や絶望に陥り,自殺を選んでしまうことを防ぐことを目指す。
  • 認定NPO法人マインドファースト:メンタルヘルスの向上を目指し,ひきこもり家族の支援グループ,自殺で大切な人を亡くした人たちの支援グループ,個別相談,子どもの喪失体験支援,ピアサポートプログラムを実施。 三豊市で月2回居場所「リトリートたくま」を開催し,語り合いの場を設けている。
  • 民生委員:見守り訪問を通じて困っている人や悩んでいる人に寄り添い,相談支援を提供。自殺念慮を抱える人々に対して,本当に死にたいわけではないことを理解し,適切な支援に繋げる役割を果たす。高齢者の居場所作りのため,地域サロン活動にも参加。一人暮らしの高齢者を中心に好評で,孤立防止や交流促進に寄与している。
  • 高瀬高校:担任による生徒の困りごと把握,学年団会議や管理職会議での情報共有,スクールカウンセラーやソーシャルワーカー,医療機関との連携で対応。
  • 三豊警察署 生活安全課長:主な対応:自殺に関する届け出や相談への対応。相談窓口として,緊急性のない相談は全国統一の警察安全相談電話「#9110」で対応。生活苦,うつ病,健康問題が原因で「死にたい」「生きていく力がない」といった相談を受ける。相談者への励ましや,行政機関・関係機関の紹介を行う。具体的な緊急性のある内容(「今から飛び降りる」「薬を飲んだ」)の場合は,通信事業者への緊急照会や居場所特定を行い,全国の警察と連携して安否確認を行う。安否確認後も,その後のケアは行政機関や関係機関の協力を必要とする。
  • 三観広域行政組合北消防署:救急現場での対応。自殺現場に臨場することもある。悲惨な現場に遭遇した隊員に対しPTSDチェックを行い,状況に応じて専門医の受診を促す。 管理職の精神的な不調が増加傾向にあることを認識。働き方改革,ハラスメント,LGBTQ+問題など,働く環境の変化により管理職の責任が増大し,心身の負担となっている。メンタルチェックの回数を増やすなど,今後の対策を検討。
  • 観音寺労働基準監督署:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度の普及(50人未満事業所への義務化を検討中)や,職場での出来事が原因の精神疾患や自殺に関する労災相談に対応。精神障害に関する労災件数は増加傾向にあり,一次予防の重要性を強調。
  • 四国学院大学:学生に対し,心理学の授業で精神疾患,うつ,いじめなどについて学ぶ機会を提供。昨年度は厚生労働省の動画を活用し,初めてゲートキーパーに関する学びとディスカッションを実施。今後も関係者と連携し,学生に直接授業を行う機会を創出したい意向。

今回,参加させていただき,三豊市内の各機関,それぞれが課題を感じながらも自殺対策に取り組まれている事を共有させていただいた。各機関が対応されたケースが,他関係機関に繋がったとしても,その後も含めて伴走できる体制が必要であり,繋ぐだけでなく,繋いだその後も大切であると思う。自殺された方にうつ状態の方も含まれていることから,心療内科・精神科の関わりについて,もう少し知りたいところではあった。当法人としては,民間だからこそ手の届く生活者に近いところでの支援に取り組んでいきたいと思う。


【報告】令和7年度三豊市ひきこもり支援対策協議会

マインドファースト副理事長 青木節子

2025年7月23日,三豊市危機管理センターにおいて,令和7年度三豊市ひきこもり対策協議会が開催された。出席者は関係機関11名三豊市職員15名計26名であった。

はじめに三豊市健康福祉部田中部長より挨拶,その後,三豊市各担当者より,令和6年度事業報告及び令和7年度事業計画についての説明があった。

次に三豊市の不登校・ひきこもり支援の現状と課題についての説明があった。まず,学校教育課より不登校の現状として,三豊市では高学年になるにつれて不登校が増える傾向である。国の「誰一人取り残されない学びの保障を目指した不登校対策」に基づき,夜間中学,教育支援センターなどが整備されている。課題として,不登校児童生徒全体に占める支援センター利用者の割合は低い状況が述べられた。子育て支援課からは,就学支援の現状として,臨床心理士による個別相談を平日・土日にも開催している。不登校に関する相談が最も多い事が説明された。課題として,学校以外の居場所が少なく送迎の問題もある。教育支援センターと民間居場所の併用が難しく,民間施設では出席扱いにならない点等が挙げられた。福祉課からは,ひきこもり支援における課題として,長期化による支援の難しさや,家族の抱え込による支援拒否,高齢の親による経済的困窮等が挙げられた。

各委員からの意見交換から浮上した課題としては,当事者が現状を「最適」と感じている場合があり,アプローチが困難な場合がある。香川若者サポートステーションからは,相談件数は増加しているものの,就職・進路決定率は低下傾向にあり,就労以外の複合的な課題を抱える相談者が増加し,以前はキャリアコンサルタントとの連携が掲げられていたが,これからは福祉との連携が必須になっている。中卒者の相談も増加し,SSWの卒業後の関わりが限定的であるため,サポステが最後の砦となるケースが多いことが述べられた。民間団体からは,不登校,ひきこもりに関しては,当事者だけでなく家族の疲弊も著しく,対話・傾聴等を通して,まず,家族が安心し元気を取り戻す支援の必要性も述べられた。

最後に今後の方向性として,若年層からの相談も増加している事から,早期支援の重要性,当事者に寄り添った支援,関係課や関係機関が一体となって,一人一人の状況に合わせた支援を今後も行っていくことが共有された。

今回の会議で,三豊市は,学校教育課,子育て支援課,福祉課,介護課と各課で情報共有がなされ,風通しのよさ,一般的に言われる縦割りでなく,横の連携が機能しているように感じられた。長期的な伴走型支援を掲げられており,マインドファーストとしても,当事者,当事者家族に寄り添った支援を継続していく大切さを感じている。

貴重な機会をいただきありがとうございました。


第262回理事会報告

日 時:2025年7月14日(月)19時00分~21時15分

場 所:高松市本町9-3白井ビル403 オフィス本町

事務連絡および周知事項,報告事項:省略

議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 会計に関すること

青木副理事より,6/30に島津理事長より会計業務の引継ぎを受けた報告がなされた。引き続き,青木から,預貯金通帳,現金出納帳について説明があり異議なく承認された。また,各事業の担当への費用・報償費等の支払いに関する説明,審議がなされた。後日,青木が支払いに関する規定をメールにて周知する事で了承された。

第2号議案 技術援助依頼に関すること

香川県精神保健福祉センターから,多度津町健康福祉課から申し込みのあったゲートキーパー普及啓発事業への講師派遣依頼がきている。対象は,一般住民,福祉保健推進員や食生活改善推進員,多度津町役場の職員など30~40名,日程は,9月24日(水)14:00~15:30,会場は,多度津町役場 地域交流センター2階ホールAである。花岡理事に予定を確認することで了承された。

第3号議案 リトリートたくまに関すること

7月2日三豊市福祉課にて開催された,リトリートたくまに関する協議報告が上田理事よりなされた。別途報告書あり。①三豊市側からの開催報告書や参加者名簿の内容の詳細化の要望に対し,三豊市の委託仕様書にも記載されているが,個人情報保護の観点から対応できない範囲があることを説明し理解を得た。②三豊市から提供される資金は,実際の経費の約半分であり,残額は当法人の財源を使用しているため,提供される資金は,委託金ではなく補助金または助成金であるという理解を共有した。③福祉課では18歳以上の受け入れも希望しており,土曜日開催日においては青年期である18歳~30歳程度の方も受け入れることを説明した。④三豊市より次年度予算について協議する時期である10月に,リトリートたくまについての協議の申出あり。⑤三豊市広報への掲載依頼したところ,9月号のひきこもり特集に掲載可であると説明があった。毎月の開催日程の掲載についても依頼する。⑥三豊市から要望のあったチラシに関しては,上田理事が作成し,チラシ原稿のPDFを担当の山中氏に送付。チラシ印刷に関しては,1000部をAIYAシステムに見積依頼することで了承された。⑦会場での当日設置用案内掲示物(A3ラミネート仕様)作成済みである。⑧三豊市子育て支援課との連携については,7月23日青木理事が子育て支援課の担当者を確認することで了承された。

第4号議案 2025年度ファミリーカウンセラー養成講座・基礎コースに関すること

主担当理事の上田から,進捗状況並びに今後の予定について説明があった。①第2回講師会が7/11(金)ZOOMにて開催され,当日の担当や講座内容が話し合われた。第3回講師会は8月に開催予定である。②募集は8月24日までとし,受講決定は8月31日とする。③養成講座終了後の申請書類の提出方法については,従来の紙媒体での郵送申請に加え,電子媒体での申請も検討中である。
島津理事長より,ファミリーカウンセラー認定面接までの流れが確認され,ファミリーカウンセラー認定委員として,上田理事・花岡理事・花房副理事長・青木副理事長とし,後日,委嘱状を作成すると報告がなされた。

第5号議案 理事の事業担当に関すること

島津理事長から各事業の担当理事の確認が行われた。

第6号議案 各事業の現状と課題に関すること

①「おどりば」について:岩﨑理事より,香川県精神保健福祉センター・高松市保健センター・引きこもり関係機関等へ,ブロシュール・チラシ等配布希望があった。
②「サバイビング」について:上田理事より,県外からの参加者や,当事者がファシリテーターを務める形態についての情報提供があった。
③個別相談について:小松理事より,件数の増加傾向と,オフィス利用時のトイレや手洗い場の動線確保と清潔維持について注意喚起が行われた。
④広報活動について:島津理事長より,従来案内を発送している関係機関以外の,新規のブロシュール・チラシ等配布先については理事会で事前に報告し,理事会がその情報を把握する必要性が述べられた。

第7号議案 心の健康オープンセミナーに関すること

担当の青木から,当初の予定通り,来年1月~3月に開催予定であることが報告された。

第8号議案 オープンダイアローグ学習会に関すること

担当の青木から,参考文献「開かれた対話と未来」の報告あった。参考文献の購入予算を確保することが提案された。

第9号議案 認定NPO法人取得10周年記念&NPO法人取得20周年記念イベントに関すること

実行委員会は,理事と希望者で進める方針が説明された。実行委員会については,具体的な活動内容とスケジュールを明確にした上で,今後の話し合いを進めることで了承された。

第10号議案 香川県県立大学設置構想への意見書に関すること

継続審議。

第11号議案 その他

①24時間テレビ「愛は地球を救う」立会募金活動参加依頼について:イオンの幸せの黄色いレシートキャンペーン登録団体として,8月31日開催の募金活動への参加依頼があったが,参加は見送ることで了承された。
②8月の理事会開催日について:島津理事長より,第2月曜が祝日のため,第1週の8月4日に開催することが提案され,了承された。

編集後記: 当NPO法人の名称「マインドファースト(こころが第一)」は,単なる活動理念でもなければ,近い将来達成されるべき実現目標として掲げたものではありません。マインドファーストは,すべての人に対する支援において,当たり前ではあるが忘れられがちな実践課題であるという意味で,法人の名称として定めたものです◆7月の参議院選挙では「日本人ファースト」を掲げた政党が票を伸ばしました。人にファーストもセカンドもありませんが,こちらのファーストは,人や国民を序列化するファーストです。序列化される社会は,すべての人にとって生きづらい社会になってしまいます◆同じ政党の候補者の「核武装が最も安上がり」発言も波紋を呼びました。日本被団協は「日本の政治家が核を使うことを前提とした議論をするのは恥ずかしい」と批判しました。日本原水協も「危険な潮流だ」と指摘しています。被爆国となった経験は「日本人ファースト(日本が最初)」だけにして,こちらはセカンドを出さないファーストでありたいものです◆そう言えば「アメリカ・ファースト」というファーストもありました。「反グローバリズム」を掲げ,国内の経済や安全保障を優先し,不安不満を抱えた有権者を取り込む傾向は,皮肉なことに,超大国だけでなく,グローバルな時流のようです。しかし,ファーストを掲げる御仁の土壇場でのチキンアウト(尻込み)に象徴されるように,グローバリゼーションが進んだ社会では,排外主義が修正を迫られることも時流になっています◆もはや一国至上主義では国民生活も国家経済も成り立たず,国にもファーストもセカンドもない時代なのでしょう。(H.)