認定NPO法人マインドファースト

No.241 2025年6月号
 マインドファースト通信

総会報告

2025年度特定非営利活法人マインドファースト通常総会議事録

  1. 日 時:2025年6月8日(日)13時30分~14時40分
  2. 場 所:高松市四番丁コミュニティセンター 会議室 高松市番町二丁目3-5
  3. 総社員数35名 本人出席10名  表決委任者12名
  4. 議事の経過の概要及び議決の結果

理事長島津昌代の挨拶の後,司会の上田ひとみから定款第26条に基づき議長選出の発議があり,立候補の申し出があった花房秀二が選出された。議長から,正会員総数35名,出席者10名,委任状提出者12名の報告があり,定款第27条並びに第29条第3項に基づき,定足数を満たすことが確認され,2025年通常総会は有効に成立する旨が宣言された。

議長は,書記に花岡正憲,議事録署名人に森本雅榮と島津昌代を指名した。

第1号議案 2024年度事業報告

理事長島津昌代から,総会資料に沿って,2024年度の事業の実施状況について報告が行われた。

第2号議案 2024年度収支決算報告

理事長島津昌代から,総会資料に沿って,2024年度の収支決算について報告が行われた。
この後,議長が,第1号議案並びに第2号議案について質疑を求めたところ質問はなかった。

第3号議案 監査報告

監事長門恵子から 監査報告があり,2025年5月1日,2024年度の事業報告並びに収支決算(財産目録,貸借対照表及び収支計算書)について,監事井原惣七とともに監査を行ったところ,適正かつ正確に執行されていると報告があった。
この後,第1号議案,第2号議案及び第3号議案の一括採決が行われ,出席者正会員10名中,賛成9名(議長は除く),反対0,議長委任状は12名で,上記3議案は承認された。

第4号議案 2025年度事業計画案

理事長島津昌代から,総会資料に沿って,2025年度の事業計画の説明が行われた。

第5号議案 2025年度収支予算案

理事長島津昌代から,総会資料に沿って,2025年度収支予算案の説明が行なわれた。
この後,議長が,第4号議案並びに第5号議案について質疑を求めたところ質問はなかった。
この後,第4号議案及び修正第5号議案について採決が行われ,出席者正会員10名中,賛成9名(議長は除く),反対0,議長委任状は12名で,上記2議案は承認された。

第6号議案  役員改選

定款第13条及び第16条の規定により役員選出の手続きが行われた。
島津昌代理事長から,事前に理事候補として,自薦及び他薦を求めたところ自薦はなく,現行理事の理事全員を留任とする他薦が1名あったとの報告があった。事務局案として,本人の承諾を得た2名の新任候補及び6名の再任候補を加えた8名の理事候補並びに2名の監事候補とするとの意見表明があった。
この後,議長が,第6号議案について質疑を求めたが質問はなく,議長が,議案の採決を行なったところ,出席者正会員10名中,賛成9(議長は除く),反対0,議長委任12名で,本議案は承認された。役員に選任された10名のうち,重任が7名,新任が3名である。
役員に選任された者は次のとおりである。

理事 青木節子 (重任)
理事 上田ひとみ(重任)
理事 植松勝利 (重任)
理事 島津昌代 (重任)
理事 花岡正憲 (重任)
理事 花房秀二 (重任)
理事 岩崎祥子 (新任)
理事 小松世依 (新任)
監事 長門恵子 (重任)
監事 前川幸徳 (新任)
その他会員からの提案なし。
以上で特定非営利活動法人マインドファースト2025年度通常総会のすべての審議を終えた。


理事による理事長及び副理事長の互選

  1. 日 時 2025年6月8日午後3時00分から午後4時10分まで
    会 場 高松市四番丁コミュニティセンター会議室(香川県高松市番町2丁目3-5)
  2. 理事総数   8名
  3. 出席理事の数 6名
  4. 定款第14条第3項の規定に基づき理事長及び副理事長の互選を行った結果,次のとおり決定した。
    なお,被選定者は,席上で,その就任を承諾した。
  5. 理事長選定の件
    理事長 島津昌代
  6. 副理事長選定の件
    副理事長 花房秀二
    副理事長 青木節子

(前号からの続き)
メンタルヘルスケア

~モノローグからダイアローグへ~

マインドファースト通信編集長 花岡正憲

精神分析療法や精神分析的心理療法は,無意識の解釈を行い,クライエントが洞察を深めることを助け,正しい生き方へ導く,という治療モデルが一般的であるが,1990年代に精神分析と「心の理論」が融合した「メンタライゼーション」理論とその実践が注目されるようになった。メンタライゼーションは,子どもの愛着の研究から生まれたものであるが,成人の境界性パーソナリティー障害(BPD)の症状が,メンタライジングの失敗に起因することから,臨床的応用は,BPDを対象として発展してきた。他者が自分とは異なる視点や価値を有することを理解するために,カウンセラーは,今ここでの(here and now)他者(クライエント)の心の状態だけでなく,カウンセラー自身の心の状態にも注意を向けるプロセスが重要とされる。この過程をメンタライジングと言う。人は,そもそも他者の心の中に何があるかを確信できないわけであるから,とりわけカウンセラーには,他者が何を考え,何を感じるかを想像する努力が求められるのは当然ともいえよう。治療場面では,カウンセラーの心の動きをオープンかつ正直な方法で用い,クライエント・カウンセラー関係をメンタライズする。発達早期に虐待やトラウマを受けた子どもは,メンタライゼーションに困難を抱えているため,メンタライジング能力の獲得は,子どもの情動調節能力の発達における重要な課題でもあり,各国でメンタライゼーションを用いて,メンタルヘルス問題を改善するだけでなく,養育現場における非メンタライゼーションの予防が模索されるようになっている。

前号で述べたオープンダイアローグの実践は,ロシアの哲学者・思想家のミハイル・M・バフチン(1895-1975)の対話主義(dialogism)とポリフォニー(polyphony 多声言語,多声音楽)の影響を受けている。ポリフォニーは,音楽の演奏や作曲において重要な概念とされている。古典・ロマン派音楽のように単一の旋律線が主旋律として聞え,他の楽器や声部がその旋律線を支えるものがホモフォニー(homophony 和声音楽)と呼ばれるのに対して,ポリフォニーは,音楽史上,中世からルネサンス期にかけてもっとも盛んに行われた。独立した複数の声部からなる異なる旋律が一定の秩序のもとで同時に進行し,それらの旋律線が相互作用することによって音楽が構成される。

バフチンは,真理は専門家や権力者の言説の中ではなく,多次元的・多視点的表現の中にあると言う。民衆的言語こそ,人々を規範から解放し,世界を身近で馴染みのあるものにしていくと言う点で,対話とポリフォニーは全体主義や支配者のモノローグへの異議申し立てでもあった。

治療者もクライエントもそれぞれ固有の物語を持っていて「客観的」な立場に立ちようがない点では対等である。「正しい」物語もなければ「間違った」物語もない。すべての知識は,相互に影響し合う対話によって生成するディスコース(言説),つまり,人々の間にある空間で対話が進行するなかで,人は「内なる声」を聞き,アイデンティティの感覚を育む。この点で,ナラティブアプローチやメンタライゼーションにも,同時に演奏される複数の旋律線が相互に作用しあうポリフォニーの世界がある。

先のICD-10やDSM-Ⅴなどの操作的診断基準は診断的インフレをもたらし,構造化された心理テストはグレーゾーンを広げ,限りなく治療対象領域が拡大していく。治療者とクライエントの間にダイアローグはなく,クライエントは治療者のモノローグに付き合わされ,クライエントの物語が作られる。主旋律を奏でるのは治療者で,クライエントはそれを引き立たせる伴奏者に過ぎない。冒頭でも述べた精神科医や精神分析医,心理カウンセラーが「shrink」と揶揄される所以はこうしたところにもあるのだろう。

治療とは自分がエンパワーされるための協調関係であると,クライエントが確信できることが大切である。どのような治療であれ,治療のガイドラインが,倫理的にクライエントのニードに同期していること,そして,治療をデザインするためには,クライエントの力を活用することが決定的に重要である。ダイアローグをとおしてクライエントの新しい物語を創造すること,これは,個別相談や危機介入場面だけでなく,グループワークやネットワーク会議においても不可欠である。

第261回理事会報告

日 時:2025年6月16日(月)19時00分~21時20分

場 所:高松市本町9-3白井ビル403 オフィス本町

事務連絡および周知事項,報告事項:省略

議事の経過の概要及び議決の結果

第1号議案 会計に関すること

理事長島津から,預貯金通帳,現金出納帳について説明があり異議なく承認された。8月から島津が不在となるため,7月から経理事務作業は,副理事長の青木が担当することで了承された。

第2号議案 技術援助に関すること

香川県精神保健福祉センターから,三豊市福祉課から申し込みのあったゲートキーパー普及啓発事業への講師派遣依頼がきている。対象は,三豊市職員30名,候補日は,9月1日(月),2日(火),3日(水),4日(木),11日(木)のいずれかで,時間帯は午前,午後の90分,会場は,三豊市危機管理センター会議室である。講師として花岡を派遣することで了承された。

第3号議案 リトリートたくまに関すること

助成金交付自治体の三豊市から,開催記録と参加者名簿の記載報告要領について指摘があったが,個人情報の取扱いだけでなく,リトリートたくまの運営の本質的問題に関わる事柄でもあり,花岡が三豊市の担当者と協議を行うことで了承された。

第4号議案 2025年度ファミリーカウンセラー養成講座・基礎コースに関すること

主担当理事の上田から,作業フローチャートを踏まえて進捗状況並びに今後の予定について説明があった。①6月15日の事前講師会を踏まえ,6月23日までにチラシを完成させ,1,000部を印刷,印刷はAIYAシステムへ依頼する。②本講座問い合わせ先のチラシへの電話番号表記は,現在使用されていない「ルポ」の電話番号とし,担当を上田とする。③カガミ文(案)の作成・印刷は上田が行う。④チラシ発送先は昨年度とほぼ同数の約200か所,AIYAシステムに封筒及び宛名ラベルの貼付を依頼し,クロネコ便で発送する。⑤チラシ発送準備作業(封入作業)は,7月5日(土)10:00にオフィス本町において行う。⑥受講申し込み者への受講料振込通知は上田が行い,振込完了確認は青木が行う。⑥講座1回目の挨拶,修了書授与及び認定審査申込への説明は,青木副理事長が行う。認定申請への対応は,適宜行う。⑦今年度の面接委員の委嘱を行い,委員会を開催する。以上が了承された。なお,第2回目の事前講師会は,7月中に開催する方向で調整である。

第5号議案 オープンダイアローグ学習会に関すること

青木から,現在情報収集等の準備中につき,7月の理事会において何らかの報告を行うことで了承された。なお,岩崎から,6月28日(土)午後1時~5時「オープンダイアローグを土台に 日本のこころのケアの近未来を考える」と題したオンラインでのNHK「ハートフォーラム」の開催が紹介された。

第6号議案 認定NOP法人取得10周年記念シンポジウム及びNPO法人取得20周年記念イベントに関すること

青木から,今年度が認定NPOの10周年,2026年度がNPO設立20周年に当たり,2026年度に開催予定の記念事業の実行委員会を立ち上げたいため,会員への呼びかけを行いたいと提案があった。シンポジウムの開催,記念誌の発行,2026年10月10日(土)の世界メンタルヘルスデイに合わせてサンポートを会場とする等の意見も出されたが,いずれにしても,6月22日のファミリーカウンセラー会議及びメールで理事長メッセージを発出することで了承された。

第7号議案 マインドファースト通信の編集に関すること

編集担当の花岡から,節目となる第241号からweb版への変更を前提として,改訂版(案)を示すことで了承された。

第8号議案 2025年度理事の事業担当に関すること

理事長島津から,新執行部体制を踏まえ担当理事の見直しを行う旨説明があった。①マインドファースト通信編集長は花岡,オープンセミナー担当は青木とすること,個別相談を除く各事業の旅費の取りまとめは,担当が各従事者の旅費をそれぞれ定額として取りまとめる。②会計ソフトに入力等の主たる事務局事務は事務局の青木が担当,事務職員に七條美里さんを賃金職員として任命する。③旅費の支払いは年度末の精算払いとし,諸謝金は半期で精算する。以上が承認された。

第9号議案 12月のぴあワークス開催に関すること

12月第3日曜日は,会場確保が不可で,他の日曜日も会場が取りにくいため,休会とすることで了承された。

第10号議案 篠原財団からの2024年度テーマ募金寄付に対する事業報告に関すること

「リトリートたくま」のイメージ写真を添えて事業報告を行うことで了承された。

第11号議案 香川県立大学設置構想への意見書に関すること

香川県が県立大学の新設・拡充のため,2025年度に検討会が設置されることになっている。今後,産・官・学だけの受益者トライアングルの中で,はじめに県立大学ありきで議論が進むことも懸念される。若者の県外流出を防ぐことを大きな狙いとしているが,少子化,非婚化が進む中で,若者を労働力として見るだけでなく,次世代の生活者を育成するという基本理念が欠かせない。こうした視点で当法人として,県当局へ提言を行うことで了承された。

編集後記: マインドファースト通信241号(2025年6月号)をお届けします。2005年6月にマインドファースト通信第1号が発行されました。爾来,月1回の発行を重ね,先月の240号でまる20年,この6月からは21年目に入ります◆これまでは,A4サイズの紙面に編集したPDF版とHTML版でホームページに掲載してきましたが,印刷や配布を目的としたPDF形式は,フォントやレイアウトに制限があり,ページ数が固定されます。この節目に,今回からは,WEBブラウザで表示されることを想定した形式で掲載いたします◆ふりかえればこの20年,私たちの社会においてメンタルヘルスへの関心が徐々に広がる中で,メンタルヘルスに関わる人々や団体,相談医療機関などの数は増え,新たな関連資格も設けられるようになりました。その一方,日常生活における社会との関わりにおいて多様なメンタルヘルス問題が発生しやすくなっていることも事実です◆1997年までは,20,000人前半で推移していた自殺者数は,翌年の1998年は前年から激増して32,863人,2003年は1978年(昭和53年)の統計開始以来最多の34,427人とり,その後3万人台で推移していました。2010年からに減少に転じ,2023年は21,837人,2024年は2,0320人と減少したものの,ここ数年は高止まりの状態です。G7各国における10~19歳の死因において,自殺が1位になっているのは日本だけです。人口10万当たりの「自殺」の死亡率でみても,日本は最も高く,7となっています◆子どもの自殺は深刻ですが,全般に子ども若者のメンタルヘルスは悪化傾向にあります。最近全国の大学に対して行われた民間のあるアンケート調査でも,コロナ禍前(2019年前)よりメンタルヘルス問題を抱える学生が約75%増えたとの数値が出ています◆6月25日,厚生労働省は2024年度分の「労災補償状況」を発表しました。増加率が顕著だったのは精神障害で1,055件,請求件数も3,780件でいずれも過去最多となっています。厚労省は,メンタルヘルス関連の労災請求の敷居が低くなったと分析していますが,メンタルヘルスリテラシーの浸透が遅れていることの現れに他なりません◆マインドファーストは,これからの20年も,メンタルヘルスの光と影を追い,新たな知見を導入したメンタルヘルスケアの取り組みや人材の育成などの諸活動をマインドファースト通信で紹介して行きたいと考えております。さらなる20年後には,AI(人工知能)が人間の知能を超える「技術的特異点(シンギュラリティ)」,いわゆる2045年問題と呼ばれる時代が到来します。AIによる雇用の喪失や社会システムの再構築などが懸念されています◆来るべき時代には,人がAIに勝る職業として,ITエンジニアが上位に挙げられるのは分からなくないですが,創造性や感情を理解する能力を必要とする職業も挙げられています。音楽やアートなど人間の創造力や感性が求められる分野,そして人間同士のコミュニケーションにおいては,感情を読み取る能力を必要とするメンタルヘルスケア分野もその一つとして挙げられます◆とは言え,向精神薬の処方や心理テスト,ステレオタイプな心理療法などは,いずれAIによって淘汰されるでしょう。メンタルヘルスケアに従事するワーカーやカウンセラーも援助の質の向上を抜きにしては生き残れない仕事になりそうです。(H.)